年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は10月5日、同機関として2回目となる「GPIFポートフォリオの気候変動リスク・機会分析」レポートを発行した。GPIFは、2019年にも米環境情報データ提供Trucostに委託した気候関連情報の開示支援結果という形で気候変動関連レポート。2020年に正式な気候レポートを出していた。
今回のレポート作成では、MSCIグループのMSCIクライメート・リスク・センター(同社が2019年に買収した旧カーボン・デルタ)、S&P GlobalグループのTrucostに引き続き分析業務を委託。さらに、知財・特許情報や研究開発投資の分析に強みを持つアスタミューゼにも委託した。
分析では、「カーボンフットプリント/カーボン・インテンシティの測定及び要因分析」「温室効果ガス排出についての企業の情報開示」「気候Value at Risk(CVaR)によるリスクと機会についてのシナリオ分析」「技術的機会が企業価値に与える影響」「移行リスクと機会の産業間の移転に関する分析」等で、様々な角度からポートフォリオを分析した。
GPIFのポートフォリオの温暖化ポテンシャルでは、国内株式で3.40℃、国内債券(社債)で3.26℃、外国株式で3.49℃、外国債券(社債)で4.34℃となり、いずれのアセットクラスでも2℃を大幅に上回った。特に「エネルギー」と「素材」のセクターが気温を引き上げていることがわかった。
不動産ポートフォリオでの物理的リスク・エクスポージャーでは、沿岸洪水、河川洪水、台風、猛暑、極寒の5つで評価し、「高い」が4%、「中程度」が24%にとどまり、影響は限定的という結果となった。但し、データ制約や、延べ床面積軸と資産価格軸で算出結果がかわるなど、分析手法にも課題がみえた。
CVaR分析では、「自動車」「エネルギー供給」「電気自動車」「化学」での低炭素関連の特許技術スコアが高く、気温上昇を抑制するシナリオのほうが、日本の株式には大きなプラスの影響があると分析された。但し、特許技術が事業に活かされ、競争力が実際に向上することが評価の前提条件となる。
GPIFが今回発表したレポートは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)ガイドラインを意識したものとなっているが、シナリオ分析に焦点を当てたものとなっており、ガバナンス、リスクマネジメント体制、マネジメント目標等についての内容は盛り込まれていない。
【参照ページ】「2020年度GPIF ポートフォリオの気候変動リスク・機会分析」を刊⾏しました
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