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【日本】商船三井、代替燃料や再エネへ大規模投資。海洋温度差発電も。人権方針も策定

 商船三井、同社のシンガポール完全子会社MOL CHEMICAL TANKERS(MOLCT)、シンガポール資源商社大手Trafigura、Trafiguraグループ舶用燃料供給TFG Marineの4社は4月19日、MOLCT運航船の世界各地の補油港で、本格的なバイオディーゼル燃料(BDF)の常用使用を可能とする供給について共同検討するための覚書を締結したと発表した。

 まず、MOLCTが運航するケミカルタンカー「NISEKO GALAXY」で、TFG Marineが供給したBDFを使用する試験航行を開始。同タンカーはすでに3月上旬、オランダ・ロッテルダム港でBDF約200tを補油し、揚地の米ガルフまでの大西洋上試験航行に成功している。

 今回使用したTFG MarineのBDFは、船舶の既存のディーゼルエンジンの仕様を変えずに使用可能。従来の舶用重油に約30%の比率で混合し、25%から30%の二酸化炭素排出量削減を見込む。

 商船三井グループでは2021年6月に発表した「商船三井グループ 環境ビジョン2.1」を発表。2050年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)達成を掲げている。

 同社は3月29日には、茨城県大洗港で、商船三井フェリーが保有・運航するフェリー「さんふらわあ しれとこ」で、ユーグレナが販売する次世代バイオディーゼル燃料を使用した実証試験航海を実施。ミドリムシ燃料の可能性も検討している。同燃料も既存にディーゼル内燃機関がそのまま使える。大型フェリーでの次世代バイオディーゼル燃料の実証試験は今回が初。

 天然ガスの燃料活用では、商船三井、日立造船、ヤンマーパワーテクノロジーの3社は3月16日、LNG燃料機関から排出されるメタンを酸化させることでメタンスリップ(メタン漏出)を削減する「メタン酸化触媒システム」に関する基本設計承認(AiP)を、日本海事協会から取得している。同システムのAiP承認は世界初。

 同システムのコンセプト設計は、日立造船とヤンマーパワーテクノロジーが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発」採択事業の一環で進めている。今回、同コンセプト設計に基づき、実船での実証運航を行う商船三井と、建造を担う名村造船所が、国際ガス燃料船舶安全コード:IGFコード等を考慮した安全対策を織り込んだ仕様であることが確認された。2026年度までの6年間、実船実証を行う。目標は、LNG燃料機関のメタンスリップ削減率70%以上。

 メタノールの燃料活用では、商船三井、商船三井内航、田渕海運、新居浜海運、村上秀造船、阪神内燃機工業の6社が3月11日に提携を発表。メタノールを舶用燃料に使用するエンジン搭載の内航タンカーを開発することで合意。重油燃料と比べメタノール燃料は、硫黄酸化物(SOx)排出量を最大99%、PM排出量を最大95%、窒素化合物(NOx)排出量を最大80%、二酸化炭素排出量を最大15%削減できる。将来的に合成メタノール(eFuel)の活用も睨む。2024年の竣工を計画。経済産業省と国土交通省公募の「AI・IoT等を活用した更なる輸送効率化推進事業費補助金(内航船の革新的運航効率化実証事業)」にも採択されている。
 
 同社は、再生可能エネルギー発電にも大規模投資を活発化している。3月には、海の表面と深層で海水温度差を活用して発電する海洋温度差発電(Marine Thermal Energy)の実用化に乗り出すことも報じられた。2025年頃に設備容量1MW級の稼働を目指し、4月から沖縄県が持つ設備で運営を開始。温かい界面表層水で代替フロンを蒸発させ、タービンを回転。その後、冷たい深層水で冷却し、代替フロンを循環させる。米ハワイ州やマレーシアで研究が進んでおり、日本での大規模実用化は今回が初。

 海洋温度差発電の課題だったコスト削減では、養殖用の取水管を活用。1kWh当たり20円程度を狙う。建設費用は数十億円規模。沖縄県は、2013年に久米島に小規模設備を実証用に設置している。NEDOは、海洋温度差発電の潜在的な発電量を47,000GWhと試算している。商船三井は、インドネシアでも導入を考えているという。

 北海道では3月4日、北拓と「北拓・MOL ウインドエナジー投資事業有限責任組合」を設立。洋上風力発電事業に100億円規模で投資する。台湾でも同日、東邦ガス、北陸電力の3社で、台湾登記の特別目的会社(SPC)を設立し、豪マッコーリーが保有するフォルモサワン・インターナショナルインベストメントの株式25.0%を共同取得することで合意。同投資会社が100%運営する台湾苗栗県の洋上風力発電「フォルモサ1」に事業参画する。設備容量は128MW。SPCの出資比率は、商船三井と東邦ガスが37.5%ずつ、北陸電力が25.0%。

 船舶リサイクルでも、トルコの同社グループ会社MOL TURKEY DENIZCILIK VE LOJISTIKで、トルコの船舶解撤ヤードからの中古舶用品を、越境ECサイトで販売するサービスを開始。最初は、アンティーク品のみで始め、段階的に他の機器や救命艇等の大型品にも拡大することを検討する。インドやバングラデシュでも同様の事業展開を視野に入れる。

 4月18日には、人権方針を公表。人権侵害の発生を予防するため、バリューチェーンを通じた人権デュー・デリジェンスのプロセスを構築し、直接または間接的に人権侵害が生じた場合は是正救済に向けて適切な対処を行うことを決めた。Chief Environmental Sustainability Officer(CESO)が責任者を務める。海運業界は、サプライチェーン上に人権問題を多数抱える業界。

【参照ページ】Trafiguraとバイオディーゼル燃料供給体制構築に関する覚書を締結し試験航行に成功
【参照ページ】国内初、大型フェリーにおける次世代バイオディーゼル燃料の実証試験航海を実施
【参照ページ】「メタン酸化触媒システム」の基本設計承認(AiP)を世界初取得
【参照ページ】国内初のメタノールを燃料とする内航タンカー開発に関する戦略的提携に合意
【参照ページ】北拓と商船三井が洋上風力発電事業投資に向けた投資事業有限責任組合を設立
【参照ページ】台湾における洋上風力発電事業への出資参画について
【参照ページ】在トルコ船舶解撤ヤードから中古舶用品買取および越境ECサイトでの販売を開始
【参照ページ】商船三井グループ 人権方針の策定

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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