欧州委員会は12月6日、EU加盟国閣僚級のEU理事会に対し、EU・英国貿易協力協定(TCA)に基づく電気自動車(EV)及び電動車バッテリーの原産地規則を2026年12月31日まで延長することを提案した。英国からの輸入確保を急ぐ。
英国のEU離脱に伴って締結されたEU・英国貿易協力協定(TCA)では、原産地規則を満たすことを要件に、指定品目毎に関税、割当が撤廃される特例制度が確立されている。その中で、EVおよび電動車バッテリーに関しては、2023年末までと2026年末までの2段階で原産地規則が設定。2023年末までの第1段階では、欧州で組み立てられたバッテリーに対し原産性が認定されるが、第2段階の2024年から2026年末までは、全部品と一部の原材料が欧州産でなければ原産性が認定されない。原産性が認定されない場合、完成車には10%の輸入関税が課される。
これに対し、欧州自動車工業会(ACEA)は9月25日、原産地規則に規定を緩和し、第1段階ルールの適用を3年間延長するよう欧州委員会に要請していた。ACEAの分析では、第2段階の関税が課された場合、2024年から2026年の調達コストは合計約43億ユーロにまで増え、EVの減算影響規模が約48万台にまで及ぶ可能性があると指摘していた。
欧州委員会は今回、ロシアのウクライナ侵攻、新型コロナウイルス・パンデミックによるサプライチェーンへの影響、EU域外での補助金拡充による競争激化等の影響を受け、原産地規則が制定された2020年の予想に比べ、欧州の電動車バッテリー・エコシステムの拡大が遅れていると認識。第1段階のルールを2026年12月31日まで一度限りの延長を行うことを決議。但し、再延長は法的に不可能にし、2027年以降は当初予定していた通りのルールを適用する。
同時に、EUでの電動車バッテリー生産の遅れを取り戻すため、欧州委員会は、イノベーション基金の下に、今後3年間で最大30億ユーロのバッテリー・バリューチェーン専用の追加資金を設けることも決議した。EU加盟国に対しても、提案募集に資金面で参加するよう呼びかける。
今後、EU理事会が審議を行い、最終是非を決定する。
【参照ページ】Commission proposes one-off extension of the current rules of origin for electric vehicles and batteries under the Trade and Cooperation Agreement with the UK
【参照ページ】EU-UK battery rules: Act now and do the right thing, EU auto chief urges Commission
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