英ESG投資推進NGOのShareActionは1月17日、資産運用世界大手68社について2022年の252のESG議決権行使動向を分析した報告書を発表した。今回の報告で4回目。2021年の報告書と同様、運用会社が環境・社会問題での議決権行使に積極的でないと指摘した。
【参考】【国際】アセットオーナーと運用会社の2021年ESG議決権行使結果。研究者やNGOが分析発表(2021年12月19日)
今回の調査対象となった運用会社は、投資運用残高(AUM)の観点で、世界大手35社、欧州大手35社、イギリス大手12社の82社が選定され、データ量が十分にある68社が選ばれた。68社に対して議決権行使結果の情報の検証を依頼し、返答があったのは61社。返答がなかった7社は、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ、コロネーション・ファンド・マネジメンツ、モルガン・スタンレー、ヌビーン、PGGM、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)、フォントベル・アセット・マネジメント。
今回の報告書では、一部地域やセクターでは改善が見られるものの、運用会社の議決権行使の姿勢は依然として消極的と苦言を呈した。ブラックロック、ヴァンガード、フィデリティ・インベストメンツ、SSGAの世界大手4社は、2021年は32%支持していたのに対し、2022年は20%の支持に低下。議決権行使助言会社のISSは75%、グラス・ルイスは44%の議案で賛成を推奨しており、賛成への投票率がそれよりも低かったことを強調した。
特に、ブラックロックはエネルギーセクターでの決議案への支持率が、2021年の72%から2022年の16%に大幅に低下。エネルギー企業はロシアのウクライナ侵攻により大幅な利益を得ており、株主への配当が増えたために異議を唱えなかったとした。
また、機関投資家の気候変動アクション・イニシアチブClimate Action 100+(CA100+)と2050年までの運用ポートフォリオのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットする運用会社のイニシアチブ「Net Zero Asset Managers(NZAM)」の署名機関に関しても分析。CA100+の非署名機関の賛成投票率が51%に対し署名機関は68%、NZAMの非署名機関の賛成投票率が61%に対して署名機関は63%となり、それぞれ非署名機関より賛成投票率は高い結果だったが、3分の1以上の案件に反対を投じた結果を疑問視した。
【参考】【アメリカ】NGO、CA100+加盟機関投資家の2022年株主総会議決権行使分析。運営不十分(2023年1月12日)
【参考】【国際】ShareAction、CA100+のアクションレベルを批判。機関投資家への要求事項提示(2022年6月2日)
地域別の分析結果では、EUの資産運用会社が米国、英国と比較して賛成投票率が高い結果だった。EUの資産運用会社の賛成投票率は、2021年の69%に対し2022年は81%と増加した一方で、2022年の米国は43%、英国は64%と2021年とほぼ変わらず。EUの賛成投票率が増加した要因として、2020年9月に第2次株主権利指令(SRD II)が施行され、資産運用会社の株主とのエンゲージメントと投資戦略に関する報告が義務化されたことが今回の結果につながったとした。
【参考】【EU】ESMA、第2次株主権利指令に基づき真の株主を知る権利の加盟各国の国内法化状況を整理(2020年9月13日)
【参照ページ】World’s largest asset managers block progress on environmental and social issues
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