2050年までの運用ポートフォリオのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットするアセットオーナーのイニシアチブ「Net-Zero Asset Owner Alliance(NZAOA)」は6月22日、各国政府に向けカーボンプライシング(炭素価格制度)の制度設計で遵守すべき5原則を発表した。
NZAOAは今回、政府によるカーボンプライシング制度はパリ協定の目標達成に必須と断言。さらに適切な制度設計が不可欠とした。エネルギー価格が高騰する中、適切に制度設計すれば、排出削減から得られる利益を最大化し、競争力の喪失や負の分配的影響といったリスクを最小化することができると伝えた。
今回提示した5原則は、「適切な野心」「公正な移行(ジャスト・トランジション)」「価格の予見可能性」「競争力」「国際協調」5つ。
まず、適切な野心。2021年時点で1.5℃目標達成に合致する炭素価格でカバーされているのは、世界の二酸化炭素排出量の5%未満にとどまっているとし、政府は、法的拘束力を持ち、科学的根拠に沿った炭素価格の実施を検討すべきとした。その際、すでに制度を整備済みの国も、十分に高い長期的な価格シグナルを提供するため、適用範囲を拡大し、野心を高めることを検討すべきとした。
次に、公正な移行。カーボンプライシングによって引き起こされる経済活動のシフトが、不利な立場にある地域社会に集中する可能性もあるため、影響を軽減または補償するようなカーボンプライシングの手段を設計すべきとした。事例としては、カーボンプライシングから得られる収入は、再教育、一時金給付、所得税減税等の広範な政策変更を通じて、不相応に影響を受けるコミュニティや世帯の支援に用いることができるとした。
3つ目は、価格の予見可能性。カーボンプライシングの幅広い道筋が確実であれば、低炭素経済への計画的かつ秩序ある移行が可能になるため、例えば、炭素税は、事前に十分な告知をした上で、着実に税率を制度設計を促した。排出量取引制度(ETS)では、価格の過度な変動を避け、時間の経過とともに価格シグナルが予測可能に増加するよう、価格の下限・上限、コリドー等の市場安定策を含むよう設計することができるとした。また、立法では、超党派で実現すれば、長期的な信頼性を与えるとした。
4つ目は、競争力。特に、炭素リーケージの問題に焦点を当て、輸出産業型の排出集約型企業に対して適切かつ的を絞った保護措置を実施することにより、リーケージを回避するよう設計すべきとした。具体的には、対象部門に対する生産量に基づく無償割当や炭素国境調整メカニズム(CBAM)を例示した。
最後は、国際協力。各国政府は、排出権取引制度の連携、知見の移転、国際的な「気候クラブ」の設立等で協力体制を進めるべきとした。
さらにカーボンプライシングを効果的に機能させるには、幅広い制度全体で政策パッケージを導入すべきとした。具体的には、イノベーションと研究政策は、カーボンプライシングがインセンティブとなる低炭素代替燃料を開発するために不可欠。また、情報不足や資本アクセスのような価格以外の障壁を克服するための支援政策も必要とした。反対に、化石燃料補助金等の阻害要因を排除すべきとした。
【参照ページ】NET-ZERO ASSET OWNER ALLIANCE POSITION PAPER ON GOVERNMENTAL CARBON PRICING
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