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【国際】G7シャルルボワ・サミット、海洋プラスチック憲章発表。日本と米国は署名せず

 カナダで開催されたG7シャルルボワ・サミットは6月9日、海洋プラスチック問題等に対応するため世界各国に具体的な対策を促す「健康な海洋、海、レジリエントな沿岸地域社会のためのシャルルボワ・ブループリント」を採択した。さらに、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの5カ国とEUは、自国でのプラスチック規制強化を進める「海洋プラスチック憲章」に署名。一方、日本と米国は署名しなかった。さらに米国はブループリントについても、「気候変動に関わるものは留保する」と解釈を制限する宣言を行った。

 海洋プラスチック問題とは、人間生活から廃棄されるプラスチックごみが沿岸部や海に流出し、生態系破壊や人体への健康被害、沿岸部の経済社会へのダメージ等を引き起こしている問題。海洋プラスチックごみの量については、2015年に学術誌サイエンスが年間800万tとし、以後、国際機関や各国政府もこの統計を基準としている。しかし、年間800万tの計算は2010年のデータを基にしているため、8年経った現在は、それより遥かに増えている可能性が高い。

 今回のブループリントでは、沿岸部地域社会の保護、知見やデータの向上、海洋資源保護、プラスチック資源のライフサイクル観点アプローチに4テーマについて、合計7項目のコミットメントを宣言。沿岸部対策では、海洋プラスチック問題とともに気候変動による海面上昇や高潮リスクに苛まれており、リスクへの対応、財政支援、観測技術の開発を実施。海洋資源保護では、IUU漁業の撲滅や、国際条約に基づく公開上の海洋保護区指定等に言及した。

 日本と米国が署名しなかった海洋プラスチック憲章では、さらに具体的な内容を規定した。主な内容は、

  • 2030年までに、プラスチック用品を全て、再利用可能あるいはリサイクル可能、またどうしても再利用やリサイクル不可能な場合は、熱源利用等の他の用途への活用(リカバリー)に転換する
  • 不必要な使い捨てプラスチック用品を著しく削減し、プラスチック代替品の環境インパクトも考慮する
  • プラスチックゴミ削減や再生素材品市場を活性化するため政府公共調達を活用する
  • 2030年までに、可能な製品について、プラスチック用品の再生素材利用率を50%以上に上げる
  • プラスチック容器の再利用またはリサイクル率を2030年までに55%以上、2040年までに100%に上げる
  • プラスチック利用削減に向けサプライチェーン全体で取り組むアプローチを採用する
  • 海洋プラスチック生成削減や既存ゴミの清掃に向けた技術開発分野への投資を加速させる
  • 逸失・投棄漁具(ALDFG)等の漁業用品の回収作業に対する投資等を謳った2015年のG7サミット宣言実行を加速化する

 G7サミットで、海洋プラスチック問題を扱うのは今回が初めてではない。2015年にドイツで開催されたG7エルマウ・サミットでは、海洋プラスチック問題に対処するアクションプランが定められ、2016年の日本でのG7伊勢志摩サミット、2017年のイタリアでのG7タオルミーナ・サミットでも再確認されている。2016年には、国連開発計画(UNEP)からも詳細な報告書も発行された。それを受け、EUや英国、米国の一部州や市ではすでに、プラスチック用品の使用を大規模に規制する法案が審議に入っている。

 日本政府は今回海洋プラスチック憲章に署名しなかった理由として、プラスチックごみを削減するという趣旨には賛成しているが、国内法が整備されていないため、社会に影響を与える程度が現段階でわからず署名できなかったと説明している。しかし、2015年からすでに3年が経過している。2016年には自国でのG7サミットでも再確認しているにもかかわらず、迅速な対応をしていなかったことを露呈した形となった。

 欧州ではすでに産業界も動き出している。P&Gやユニリーバはすでに、リサイクル可能または堆肥化可能なプラスチック容器の使用や、容器製造での再生素材利用率向上の定量目標を掲げている。英国マクドナルドもプラスチック・ストローの利用停止計画を発表した。いずれも企業の自主的な発表で、将来の規制リスクや移行リスクを積極的に先取りした動きと言える。

 機関投資家も、海洋プラスチック問題でアクションを起こし始めた。欧州委員会、欧州投資銀行(EIB)、世界自然保護基金(WWF)、英チャールズ皇太子のInternational Sustainability Unit(PUFISU)は3月8日、持続可能な海洋経済のための金融原則「Sustainable Blue Economy Finance Principles(ブルーファイナンス原則)」を発足。大手の機関投資家も同原則に署名をし始めている。

【参考】【イギリス】下院環境監査委員会、政府に海洋プラスチック削減の具体策要求。ペットボトルのデポジット制度等(2018年1月8日)
【参考】【国際】マクドナルド、2025年までに再生素材パッケージに転換し、使用後は全てリサイクル(2018年1月23日)
【国際】EIBやWWF等、海洋保護のためのブルーファイナンス原則発足。署名機関募る(2018年3月13日)
【参考】【イギリス】マクドナルド、プラスチック製ストローを段階的に廃止。欧州で進むプラスチック離れ(2018年4月4日)
【参考】【イギリス】政府、英連邦諸国の海洋プラスチック削減イニシアチブCCOA始動。すでに4ヶ国が参加(2018年4月21日)
【参考】【EU】欧州委員会、使い捨てプラスチック製品の大規模使用禁止法案提出。ストロー、食器等(2018年5月31日)
【参考】【国際】海洋プラスチック廃棄物が生態系と人類に深刻な被害。UNEP報告書(2016年6月7日)

【参照ページ】CHARLEVOIX BLUEPRINT FOR HEALTHY OCEANS, SEAS AND RESILIENT COASTAL COMMUNITIES
【サイエンス誌論文】Plastic waste inputs from land into the ocean

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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