ILO(International Labour Organization:国際労働機関) 2015/10/20 辞書

「いずれかの国が人道的な労働条件を採用しないことは、自国における労働条件の改善を希望する他の国の障害となる」(ILO憲章)

国際労働機関(ILO)は、「世界の永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立することができる」という憲章原則の上に打ち建てられています。1日8時間労働、母性保護、児童労働に関する法律、さらに職場の安全や平和的な労使関係を推進する一連の政策といった産業社会の画期的な成果を生み出してきました。

ILOは幅広い労働の問題に取り組む国際機関で本部はスイスのジュネーブにあり、加盟国は2015年6月15日現在で186カ国、40以上の国に地域総局および現地事務所が置かれています。職員や専門家の数は約2,500人です。

ILOの目標

主要戦略目標は次の4つです。

  • 仕事の創出:必要な技能を身につけ、働いて生計が立てられるように、国や企業が仕事を作り出すことを支援
  • 社会的保護の拡充:安全で健康的に働ける職場を確保し、生産性も向上するような環境の整備、社会保障の充実
  • 社会対話の推進:職場での問題や紛争を平和的に解決できるように、政・労・使の話し合いの促進
  • 仕事における権利の保障:不利な立場に置かれて働く人々をなくすため、労働者の権利の保障、尊重

目標達成の手段

4つの目標は、数々の手段を通じて実現されています。

  1. 基本的人権の推進、労働・生活条件の向上、雇用機会の増進のための国際的な政策や計画の策定
  2. 各国の権限ある機関が上記の政策を実施する際の指針として役立つ国際労働基準の設定と、それを支える独特の適用監視システム
  3. 各国が上記の政策を効果的に実施するのを支援するため、加盟国の政府並びに労使団体との積極的なパートナーシップに基づき立案・実行される広範な国際的技術協力活動
  4. このような取り組みを支える訓練・教育・調査研究・出版活動

ILOの機構

ILOは国連機関の中では唯一、政労使の三者構成を取っています。これは、政策策定や計画立案時には、経済を動かす社会的パートナーである労使代表も、政府と等しく発言する権利をもっているというものです。

社会、経済、その他多くの問題に関する国内政策の策定、そして適切な場合にはその実行における労働組合と使用者の「社会対話」を推進することによって加盟国内でもこの三者構成主義を奨励しています。

最低限の国際労働基準とILOの広範な政策は、毎年開かれる国際労働総会で設定されます。総会は加盟国が分担するILOの予算及び活動計画を2年毎に承認します。総会は、世界の労働問題、社会問題を討議する国際フォーラムでもあります。加盟国はそれぞれ、総会に4名の代表(政府2名、労使各1名)を送る権利をもっています。代表はそれぞれ独立して発言し、投票します。

年1回開かれる総会から次の総会までの間のILOの業務は、政府28名、労使各14名の代表で構成される理事会が指揮します。この他、職業訓練、経営開発、労働安全衛生、労使関係、労働者教育、女性と若年労働者の問題などを取り扱う専門家会議、また、それぞれの地域にとって特別に関心の深い問題を検討するため、ILO加盟国の地域会議も開かれています。

この他にも研究と研修の機会を提供する「国際研究センター」や、研究ネットワーク促進やフォーラム・セミナーなどの開催そして出版などを行う「国際労働問題研究所」があります。

国際労働基準(基準設定と監視機構)

国際労働機関(ILO)の目的は、社会正義を基礎とする世界の恒久平和を確立することにあり、基本的人権の確立、労働条件の改善、生活水準の向上、経済的・社会的安定の増進に取り組んでいます。世界的な規模でさまざまな活動を行っていますが、その中でも、条約や勧告の制定という伝統的な基準設定活動はもっとも古くかつ最も重要なものの一つに上げられます。

条約と勧告は、狭義の国際労働基準を構成しており、条約には議定書が付属しているものがあります。国際労働基準の取り扱う分野は広範囲にわたり、結社の自由、強制労働の禁止、児童労働の撤廃、雇用・職業の差別待遇の排除といった基本的人権に関連するものから、三者協議、労働行政、雇用促進と職業訓練、労働条件、労働安全衛生、社会保障、移民労働者や船員などの特定カテゴリーの労働者の保護など、労働に関連するあらゆる分野に及びます。

条約は、国際的な最低の労働基準を定め、加盟国の批准という手続によって効力が発生します。条約の発効には、通常2カ国の批准が必要とされます。批准国は、条約を国内法に活かすという国際的義務を負うことになり、廃棄(denunciation)の手続をとらない限り、たとえILOを脱退しても一定期間はその条約に拘束されます。

勧告は、批准を前提とせず、拘束力はありません。勧告は、加盟国の事情が相当に異なることを配慮し、各国に適した方法で適用できる国際基準で、各国の法律や労働協約の作成にとって一つの有力な指針として役立つものです。勧告は、事情が許せば条約化する予備的な措置として採択される場合も多く、勧告に定める基準は条約化のプロセスのための指針といえます。最近は同時に同テーマの条約と勧告を採択し、条約は原則的な規定を内容とし、詳細は勧告で規定する場合が多くあります。

条約や勧告の本当の価値は、批准数だけで判断するべきではありません。それが各国で実際にどのように適用され、また各国の生活水準向上や労働条件改善にどれほど役立ったか、という点にこそ真の意義を見出すことができます。さらに、条約・勧告とは異なる形式として宣言、行動規範(code of practice)、ガイドラインなどと呼ばれる、法的拘束力を伴わない規範があり、条約や勧告とあわせて広義の国際労働基準を構成しています。

数字で見る国際労働基準

  • 加盟国数:185
  • 条約の数:189(うち撤回5、棚上げ25)
  • 勧告の数:202(うち撤回・置き換え37)
  • 日本の批准条約数:49
  • 加盟国の平均批准条約数:43
  • OECD諸国の平均批准条約数:74

ILOと日本

日本は、国際労働機関(ILO)が誕生した1919年からの原加盟国です(1940年から1951年の間は脱退)。ILO創設メンバーである日本とILOは長きにわたり、活発で緊密な関係を築き上げています。1923年に東京支局が開設され、2001年に事務局長直轄の事務所となり、2003年には駐日事務所に改称されました。日本政府は再加盟後の一時期を除き、創設以来主要産業国の一員として常に常任理事国の地位を占めてきました。

日本はILO通常予算に対する第2位の拠出国で、2014年の日本の分担金率は、トップのアメリカ(22%)に次ぐ10.839%で、拠出額は4,125万スイスフラン(1スイスフラン=約100円)となっています。この他に、技術協力事業に対する任意拠出金においても主要なドナー国であり、2012-2013年では約1,360万ドルを拠出しています。

ILO本部が掲げる3つの課題

現在、ILO本部では次の3項目を重要課題として取り組みを進めています。

1)若年層の雇用促進

世界中で起きている現象として、若年層の失業は成人に対して3倍であり、約7,300万人が仕事を求めているとのことです。高い失業率、不活発な状態、先進諸国における不安定な仕事、途上国で存続する、低賃金により生活が困難な労働者などへの対策が急務とされています。

2)ポスト2015年開発アジェンダの主要課題である仕事の確保と生計の維持

ポスト2015年開発アジェンダについては「ILOと国連」の項目でも述べられていますが、雇用、賃金と共にILOが注力しているのが「ディーセント・ワーク(decent work)」です。

このディーセント・ワーク の基本的概念は、「個人に尊厳を、家族に安定を、地域に平和を、そして人びとに民主主義をもたらし、経済成長を促進し、さらなる生産的な仕事の創出や企業の発展につながる元となる仕事と記述されています。ILO駐日事務所はこの概念をコンパクトに「働きがいのある人間らしい仕事」と表現していますが、いずれにしても人びとに充実や安定をもたらす仕事への取り組みが重要課題の一つとなっています。

3)社会的保護

世界の人口の20%だけが、ヘルスケアへのアクセスや老齢、失業、傷病などの際の適切な所得保障を得られており、半分以上の人びとは全く何の保障もない状況下での生活を余儀なくされています。ILOは各国政府に対して改善の働きかけや支援を行っています。

ILOと国連

ILOは第1次世界大戦後の1919年にベルサイユ条約によって国際連盟と共に誕生しました。第2次世界大戦後の1944年のフィラデルフィア宣言によってILOの基本目標と基本原則が拡大され、再確認されました。さらに1946年にILOは新たに設立された国際連合(国連)と協定を結んだ最初の専門機関となり、それ以来、国連と連携しつつ活動して来ました。

現在、ILOが国連と共に最も優先順位が高い課題の一つとして取り組んでいるのがポスト2015年開発アジェンダの主要課題として挙げられている「包摂的でサステナブルな経済成長と、すべての人のための生産的で完全な雇用、そして働きがいのある人間らしい仕事を促進する」ことです。

この中でも特に注目されるのが「2030年までに若者や障害をもつ人を含むすべての人が仕事に就き、その仕事に相応した平等な報酬を得ること」と「2020年までに就労していない、教育・訓練を受けているわけでもない若年層を削減すること」で、日本でも対処すべき社会的な課題としてクローズアップされています。

引用・参照サイト

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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