OECD多国籍企業行動指針とは、1976年に経済協力開発機構(OECD)がガイドライン参加国の多国籍企業に対して「責任ある企業行動(Responsible Business Conduct: RBC)」を求めて策定した原則や基準をまとめたガイドラインです。同行動指針は、世界経済や企業行動の変化などに合わせ、1979年、1982年、1984年、1991年、2000年、2011年の計6回改訂されています。2017年3月現在の行動指針の参加国は、OECD加盟国である35カ国に、アルゼンチン,ブラジル,コロンビア,コスタリカ,エジプト,ヨルダン,リトアニア,モロッコ,ペルー,ルーマニア,チュニジアを加えた全46カ国が参加しています。OECD多国籍企業行動指針の英語名は「OECD Guidelines for Multinational Enterprises」。そのため、日本では「OECD多国籍企業ガイドライン」とも呼ばれています。
背景
1970年代に多国籍企業の環境破壊や人権侵害などの問題が顕在化してきたことを背景に、OECDは1976年6月、「国際投資と多国籍企業に関するOECD宣言」を採択。国境を跨ぐ多国籍企業の行動是正のために、国際会議の場で各国が協力する姿勢を示しました。同宣言は、全部で4つの文書で構成されており、そのうちの一つがOECD多国籍企業行動指針。他の3つは、「内国民待遇」「相反する要求」「国際投資促進及び抑制政策」です。
行動指針は、多国籍企業が世界経済の発展に重要な役割を果たすことを認識し,行動指針参加国政府が多国籍企業に対して行う「勧告(recommendation)」です。行動指針は、多国籍企業の責任として、(1)経済、環境、社会面における発展に貢献すること、(2)事業活動に起因する悪影響(adverse impact)を防ぎ、悪影響が生じた場合は対応すること、の2つを位置づけました。そして、「一般方針や情報開示、人権、雇用及び労使関係,環境,贈賄・ 贈賄要求・金品の強要の防止,消費者利益,科学及び技術,競争,納税」など、幅広い分野に関して言及がされました。
特徴
OECD多国籍企業行動指針には、大きく3つの特徴があります。
- 多国間で合意された唯一の企業の責任ある行動に関する包括的な行動指針
- 企業に対して自主的なガイドラインの遵守を期待しており、法的拘束力は持たない
- 各国に連絡窓口を設けてガイドラインに関する問題処理を行う制度を設けている
内容
2011年度改訂版の内容について、外務省のホームページでは次の表のように説明されています。
(参照)外務省「OECD多国籍企業行動指針」
上記に加えて、2011年度改訂版ではデュー・デリジェンス実施に関する規定も追加されました。また、デュー・デリジェンスに関する文書としてはデュー・デリジェンス手引書の「OECD Due Diligence Guidance for Responsible Business Conduct」と補足資料「Companion to the Due Diligence Guidance」があります。
NCPについて
参加国政府は、OECD多国籍企業行動指針を普及・実施、また問題解決のため、連絡窓口を設置しています。日本には日本NCPと日本NCP委員会が設置されています。前者は、外務省経済局経済協力開発機構室、厚生労働省大臣官房国際課、経済産業省貿易経済協力局貿易新興課の3者で構成されています。また後者は、日本NCPの諮問組織として、日本NCPに加えて日本労働組合総連合会と日本経済団体連合会がメンバーとなっています。
OECD多国籍企業行動指針に対する違反の疑いが見られた場合は、政府、法人、個人のいずれもが参加国のNCPに対して問題解決を申し出ることが認められています。しかしNCPは司法機関ではなく、問題解決を支援する機関であるため、基本的には行政当局や司法当局に対する窓口の役割を担います。具体的にNCPがどのような支援をしていくれるかは、各国のNCPごとに大きく差があります。
参考文献
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