PPP(Polluter-Pays Principle:汚染者負担原則)とは、汚染者が汚染防止費用を負担すべきであるという考え方です。1972年5月のOECD理事会が採択した勧告「環境政策の国際経済面に関するガイディング・プリンシプル」の中で提唱されました。例えば、工場での生産により有害物質を排出する場合、その有害物質は当該工場の責任において処理されるべきだというものです。
背景
PPPが生まれた背景には、民間企業に対し公害対策を課す国とそうでない国があり、企業の負担に差が出ることから国際競争において不公平な状況が発生していたことがあります。そこでPPPでは、汚染者が汚染防止に必要な費用を負担することで、希少な環境資源の合理的な利用と貿易や投資の観点から資源の最適配分の達成を目的としています。すなわち、生産、流通、消費のプロセスにおいて環境汚染を伴う場合、環境維持のための費用を当該商品・サービスのコストに反映させるということです。このようにすることで汚染者の損害削減を促進することを狙っています。
日本における汚染者負担の考え方
上記のOECDによる経済学的視点に加え、日本では次のような考え方も存在していました。それは、健康や生活環境を阻害する物質を発生させたものが、責任を負うべきという考え方です。これは公害による健康被害や汚染を経験した反省から生まれたと言われています。結果、日本でのPPPの考え方には、資源の最適配分と環境保全の両方の意図が含まれています。
さらに、負担すべき費用についての認識もOECDによるPPPと日本の汚染者負担の考え方には、厳密には違いがあります。前者は汚染防除費用を主に想定し、後者はさらに環境復元費用や被害救済費用も含んでいます。
世界の取り組み
国際的な動向として、1992年の地球サミットで採択された「環境と開発に関するリオ宣言(リオ宣言)」第16原則でも次のようにPPPが採用されました。
「国の機関は、汚染者が原則として汚染による費用を負担するとの方策を考慮しつつ、また、公益に適切に配慮し、国際的な貿易および投資を歪めることなく、環境費用の内部化と経済的手段の使用の促進に努めるべきである。」
また各国の取り組みの例には、1980年に米環境保護庁(EPA)が制定したスーパーファンド法があります。日本では、OECDによるPPP以前から存在していた「公害対策基本法」や「公害防止事業費事業者負担法」に加え、1973年に「公害健康被害補償法」が制定されました。
参考文献
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