コミュニティ投資(Community Investment)とは、地域社会開発を目的とした、社会的弱者や低所得者層等、支援が必要なコミュニティや地域に根ざした活動に対する投資のことです。主に、財団、NGO、銀行、信用協同組合、貸付基金、マイクロファイナンス機関等を通じて行われています。複数あるESG投資の一つの種類としても扱われています。とりわけ、社会や環境に対するインパクトを重視するものは「インパクト投資」と呼ばれており、インパクトを重視するコミュニティ投資は「社会的インパクト投資」と呼ばれる傾向にあります。
背景
コミュニティ投資が注目されるのは、社会的弱者や低所得者層が、金融機関から融資を受けにくいことが背景にあります。コミュニティ投資の対象となるコミュニティ内では共通のニーズがあり、その解決がコミュニティ発展に貢献するにもかかわらず、金融機関からの融資が受けにくいため解決のための資金不足に陥っています。もちろん政府からの援助を受けることも可能ですが、長期的支援の不確実性や支援を受けられたとしても、政府の意向に沿った援助となり、コミュニティの本当のニーズに合わなくなる可能性があります。そこで、コミュニティ投資が生まれました。
世界の状況
世界のESG投資額の統計を集計する国際団体GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)の報告書「Global Sustainable Investment Review(GSIR)」によると、コミュニティ投資は、2014年から2016年にかけて1,010億米ドルから2,480億米ドルへと増加し、146%の伸びとなりました。地域別では、欧州が220億米ドルから1,071億米ドルと385%増加。米国は690億米ドルから1,234億米ドルと79%増加。日本は52億米ドルから80億米ドルと54%の増加となりました。
機関投資家がコミュニティ投資を行う方法としては、コミュニティ開発金融機関(CDFIs: Community Development Financial Institutions)に投資し、CDFIsが融資や専門的・技術的なアドバイスを行う方法や、コミュニティ投資ファンドに投資する方法があります。例えば、2016年10月、米農務省と銀行世界大手米バンク・オブ・アメリカは、貧困地域やネイティブ・アメリカン地区での少額資金融資をするコミュニティ開発金融機関に低利子長期融資を発表。英銀行大手のHSBCは2015年から2017年にかけて世界中のコミュニティ活動や慈善活動に融資するコミュニティファンドを設立しました。
また、金融機関以外の企業によるコミュニティ投資もあります。例えば、コカ・コーラは米国際開発庁(USAID)、世界エイズ・結核・マラリア対策基金、ビル%メリンダ財団と共同で、医薬品・医療用品を届ける「ラストマイル・プロジェクト」を実施しています。これは官民パートナーシップ(PPP)として実施されているコミュニティ投資です。
【参考】コカ・コーラ、アフリカで医薬品を供給する「ラストマイル・プロジェクト」を10ヶ国へ拡大
【参考】農務省とバンカメ、貧困地域で活動する金融機関への資金提供プログラムを発表
【参考】HSBC、185億円規模のコミュニティファンドを設立。世界中でコミュニティ投資へ
日本の状況
上記の統計結果から分かるように、日本においてコミュニティ投資は、欧米と比較してまだ発展途上です。日本のESG投資推進NGOの日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が発行した報告書「日本サステナブル投資白書(2015年)」によると、ESGインテグレーションや国際規範に基づくスクリーニングなどの他のサステナブル投資の運用手法に比べ、コミュニティ投資への投資残高は非常に低くなっています。
また、日本におけるコミュニティ投資でも、NPOバンク、マイクロ投資ファンド、マイクロファイナンス等の複数の形態があり、さらにクラウドファンディングも含められることがあります。同報告書が定義する「市民が自発的に設立し、市民からの資金に基づいて、市民事業など社会的に求められているニーズに対して融資を行う、非営利の金融機関」であるNPOバンクは、2015年12月時点で25団体。そのうち14団体の融資の合計は32億円。環境や福祉、難民、自然エネルギー、県内で活躍するNPO法人・個人事業主などを対象に融資されています。
参考
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