ブルーカーボン 2021/02/10 辞書

 ブルーカーボン(Blue Carbon)とは、マングローブ林や海草の草地、潮間帯の塩沼などの沿岸生態系に貯蔵・隔離された有機炭素のことです。

 沿岸生態系には相当量の炭素が含まれており、この炭素が放出される危険性があるため、気候変動を緩和する上で重要な役割を果たしています。しかし、残念なことに、マングローブ、海草、塩沼(そのほとんどが人間の活動によって引き起こされている)の損失率は、地球上のどの生態系よりも高いと推定されており、炭素の恩恵を受けるために、より効果的な管理を行うことが国際的に注目されています。

言葉の起源

 海洋の炭素循環に関する研究はすでに150年以上前から行われていました。1914年には、デンマークの沿岸堆積物の炭素蓄積量の大部分を海藻(Zostera marina)が占めていると結論づけた科学者がおり、また地球規模の炭素吸収源としてのマクロファイトの役割に注目し、炭素の貯蔵と埋蔵への世界的な貢献度を初めて推定した科学者もいました。

 ブルーカーボンの概念は、森林(グリーンカーボンと呼ばれる)に加えて、沿岸の生態系が有機炭素の貯留に大きく貢献していることを浮き彫りにするための比喩として2009年に国連環境計画(UNEP)が造語しました。これは海洋や沿岸の生態系の劣化と、気候変動を緩和するための保全と回復の必要性に注目するためであります。

ブルーカーボンとIPCCの関係

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気温上昇が世界に与える影響を詳しく説明した報告書の中で、温暖化を1.5℃に抑えるというパリ気候協定の目標を達成するための努力を加速するよう促しました。同報告書は、大気中の二酸化炭素を隔離するための大規模な「ネガティブ・エミッション」システムの開発を奨励しています。そのための基本的な技術はまだ開発中でありますが、IPCCの専門家は、変化する気候の現実に適応する地域社会にとって不可欠な生態系サービスを提供しながら、この目標を達成するために自然、特にマングローブの役割を強調しています。

炭素貯蔵

 マングローブ林は、熱帯雨林をも凌駕する最も影響力のある炭素吸収生態系の一つです。マングローブ林は膨大な量の「ブルーカーボン」を封じ込める効果があり、IPCC報告書では、統合的な沿岸資源管理の一環として、沿岸の植生生態系の保護を奨励しています。しかし、マングローブの吸収力以上に重要な話は、マングローブの破壊が気候変動に及ぼすインパクトです。

 マングローブの消失は、森林の下の湛水泥炭に蓄えられていた古代の炭素とメタンを放出します。専門家によると、劣化した沿岸生態系から年間10億2,000万tもの二酸化炭素が放出されていると推定されており、これは世界の熱帯林伐採による排出量の19%に相当します。これらの生態系における森林破壊を防ぐことは、他の多くの場所よりも気候変動に大きな影響を与えるでしょう。

沿岸の適応

 IPCC報告書は、沿岸地域社会を保護するためにマングローブのような自然生態系を利用することの重要性と経済的に合理的であることを認識した統合的な沿岸域管理を奨励しています。場合によっては、沿岸の生息地と生態系の回復は、海面上昇、暴風雨の激化、沿岸浸水、塩害などの課題に対応するための費用対効果の高い方法となりえます。マングローブの保護と復元は、温暖化によって引き起こされる沿岸災害のリスクを軽減する、生態系に基づく適応策でもあります。

 また報告書は、マングローブを地域社会の保護に組み込む際には、マングローブが潮汐の変化に適応できるように配慮しなければならないことも強調しています。マングローブは海面が上昇した際に、内陸に生息地を移動できなければ、変化する海況と沿岸インフラの間に閉じ込められてしまう「沿岸圧迫」に直面する可能性があります。また、地域の水域は、マングローブがこのような沿岸移動を可能にする土砂の供給を維持しなければいけません。しかし、これらの適応には限界があります。報告書によると、現在の海洋からの生態系サービスは、1.5℃では減少し、2℃では損失が大きくなるとされています。海面上昇、熱帯性暴風雨の増加、極端な気温の上昇は、マングローブに悪影響を及ぼすでしょう。

ブルーカーボンとパリ協定の関係

 国連気候変動枠組条約(UNFCC)によると、気候変動の緩和と適応の価値を高めるための陸域及び沿岸生態系の保護、回復、持続可能な管理は、2030年までに世界の気温上昇を2℃以下に抑えるための解決策の最大37%を提供しています。

 マングローブ林やその他の陸域及び海洋システムからの炭素隔離の重要性は、パリ協定では第5.1条に「締約国は、森林を含め、条約第4条第1項(d)で言及されている温室効果ガスの吸収源及び貯留源を保全し強化するための行動をとるべきである」と明記されています。条約第4条1項(d)は、すべての締約国が「持続可能な管理を推進し、バイオマス、森林、海洋、その他の陸域、沿岸、海洋の生態系を含め、モントリオール議定書で管理されていないすべての温室効果ガスの吸収源及び貯留層を、適切なものとして保全し、強化することを推進し、協力する」としています。

ブルーカーボンでのプロジェクトの事例

ブルーカーボン・イニシアティブ(Blue Carbon Initiative)

 ブルーカーボン・イニシアティブは、地球規模の気候変動の影響を軽減するために、沿岸生態系の保護と回復に取り組んでいます。この活動を支援するために、国際ブルーカーボン科学作業部会と国際ブルーカーボン政策作業部会を調整しており、必要とされる研究、プロジェクトの実施、政策の優先順位のための指針を提供しています。

横浜ブルーカーボンプロジェクト

 港町として発展してきた横浜は、かつては漁業が基幹産業でした。横浜市は、日本政府が主導する2018年の「SDGsアクションプラン」の一環である「SDGs未来都市」に選ばれました。横浜市では現在、世界で初めて検証されたカーボンオフセットのプロジェクト、”横浜ブルーカーボンプロジェクト“に取り組んでいます。

ブルーカーボンポータル(Blue Carbon Portal)

 ブルーカーボンは、科学、保全、政策の分野で急速に成長している新しい概念です。この新しい概念の情報へのアクセスと透明性を高めるために、中心的なオンラインコミュニティと専門家のネットワーキング・ツールを提供するために作成されたBlue Carbon Portalがあります。このポータルは、場所に関係なくすべての関係者が参加できる手段を提供し、ブルーカーボン・コミュニティの統合に貢献しています。

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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