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ESG(環境・社会・ガバナンス)・ESG投資 2016/05/14 辞書

ESGとは

 ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったものです。今日、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まってきています。一方、ESGの観点が薄い企業は、大きなリスクを抱えた企業であり、長期的な成長ができない企業だということを意味します。ESGの観点は、企業の株主である機関投資家の間で急速に広がってきています。投資の意思決定において、従来型の財務情報だけを重視するだけでなく、ESGも考慮に入れる手法は「ESG投資」と呼ばれています。ESGと似た概念にSRI(社会的責任投資)という言葉がありますが、最近ではESG投資のほうがより使われる傾向にあります。ESG投資は、他にも「責任投資(Responsible Investment)」「持続可能な投資(Sustainable Investment)」など様々な呼称がありますが、意味は同じです。

ESG投資とは

 ESG投資という言葉が使われるようになった背景には、2010年頃からESG投資に対する機関投資家の理解が大きく変わってきたということがあります。ESG投資より前にSRI(社会的責任投資)という言葉がよく使われていた時代には、SRIと言うと、何か通常の投資とは違う、強く社会や環境を意識した倫理的な投資手法だ、と受け止められていました。当時SRIには否定的な見方も多く、社会や環境を意識した投資は財務リターンが低く、有効な投資手法ではないと見る向きが一般的でした。しかし、昨今、社会や環境を意識した投資は、同時に財務リターンも高く、また投資リスクが小さいという実証研究が大学研究者や金融機関実務者から発表されるようになりました。この新たな考え方は、企業経営においても「サステナビリティ」という概念が普及し、社会や環境を意識した経営戦略は、企業利益や企業価値向上に繋がると言われるようになった動きと対を成しています。

 ESG投資の流れを裏付ける大きな活動のひとつが国連責任投資原則(PRI)です。国連責任投資原則は、国連機関である国連環境計画(UNEP)と国連グローバル・コンパクト(UNGC)が推進しているイニシアチブで、年金基金などアセットオーナーや運用会社がESG投資を推進していくことを自主的に署名し参加を表明しています。すでに世界1,500機関以上のアセットオーナーや運用会社などが署名しており、世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も2015年9月に署名をしました。今やESGは特殊な投資手法という位置づけから、一般的な投資手法(メインストリーム)へと変貌を遂げようとしています。

 日本政府もESG投資を後押ししています。2014年2月に金融庁が発表した「日本版スチュワードシップ・コード」、2015年6月に金融庁と東京証券取引所が発表した「コーポレートガバナンス・コード」は、ともにESG投資の概念を推進する内容となっています。

ESG投資の種類

 世界のESG投資の統計を発表しているGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)は、ESG投資の種類を7つに分類しています。

1. ネガティブ・スクリーニング

 特定の業界の株式や債券を投資対象から除外する投資手法です。除外される業界の例としては、武器、たばこ、原子力発電、ポルノ、ギャンブル、アルコール製品、動物実験、化石燃料などがあります。除外理由としては、宗教的倫理観に反するものというものが多かったのですが、最近は原子力や化石燃料など環境破壊に起因するものも増えてきました。ESG投資が、まだSRIと呼ばれていた時代、いち早くSRIを始めたのはキリスト教系の財団や年金基金が多く、このネガティブ・スクリーニングからSRIは始まりました。今でもネガティブ・スクリーニングは、世界最大のESG投資手法です。

2. 国際規範スクリーニング

 特定の業界を除外するネガティブ・スクリーニングに対し、国際規範スクリーニングは業界横断で、環境破壊や人権侵害など国際的な規範を基に、最低限の基準を達していない企業の株や債券を投資対象から除外する手法です。参照される国際規範は、国際労働機関(ILO)が定める児童労働や強制労働などの規範、OECDが定める規範、国連機関が定める環境ルール違反など多岐に渡り、どれを採用するかは機関投資家それぞれの判断となります。最近では、採用した規範ごとにスコアを採点し、総合ESGスコアの低いものを除外するというものも生まれてきました。国際規範スクリーニングは、北欧の機関投資家に多いのが特徴です。

3. ポジティブ・スクリーニング/ベスト・イン・クラス

 上記2つが特定のものを除外するスクリーニングであったのに対し、ポジティブ・スクリーニングは、ESGに優れた銘柄のみを選抜して投資する手法です。銘柄のESG評価では、国際規範スクリーニングと同様に、人権、環境、従業員対応、ダイバーシティなどESGテーマごとに基準を設け、総合ESGスコアをもとにスコアが高いものを選抜するという作業が実践されています。

4. サステナビリティ・テーマ投資

 社会や環境に関する特定のテーマを設定し、それに関連する企業の株式や債券に限定した投資を行う手法です。「エコファンド」「水ファンド」「再生可能絵エネルギー投資ファンド」などは、サステナビリティ・テーマ投資の一例です。日本にSRIという言葉が入ってきたときに、最初に組成されたのが「エコファンド」だったため、日本では最も老舗とESG投資手法であり、そのためESG投資と言えばサステナビリティ・テーマ投資をイメージすることも日本では多いです。しかし、世界全体のESG投資統計の中で、サステナビリティ・テーマ投資の割合はごくわずかで、むしろ最近ようやく伸びてきています。

5. インパクト・コミュニティ投資

 
 社会的インパクトや環境インパクトを重視した投資手法です。コミュニティの発展を目指すためのコミュニティ投資もインパクト投資の一分野と定義されています。インパクト投資には、財務パファーマンスを犠牲にしても社会や環境へのインパクトを重視するタイプのものと、社会や環境へのインパクトと財務パフォーマンスも双方とも追求するタイプのものがあります。社会や環境へのインパクトを行う企業には、社会企業(ソーシャル・エンタープライズ)と呼称するものが多く、上場していない企業が多い領域です。そのため、インパクト投資は非上場企業や特定のプロジェクトなどに投資を行うことが主流です。また、最近では、インパクトをより重視するという観点から、グリーンボンド、ソーシャルボンド、グリーン・インパクト・ボンド(EIB)、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)なども、インパクト投資に位置づけられることが増えてきています。

6. ESGインテグレーション

 現在、ESG投資手法の中で最も注目されているといっても過言ではないのが、このESGインテグレーションです。ESGインテグレーションは、既存の投資先判断の中に、財務情報だけでなく、非財務情報、すなわちESG情報をともに織り込んで判断していこうというものです。特定のものだけを除外したり、特定のものだけを選抜するのでもなく、全体的な銘柄評価の中でESG観点が考慮されるのが、その特徴です。一方、どのような非財務情報をどれだけ重視するかは個々の機関投資家の判断となるため、ESGインテグレーションの中身は千差万別と言えます。ESGインテグレーションは、現在急成長しており、ESG投資全体の中でも、ネガティブ・スクリーニングに次いで2番目に大きな運用額となっています。

7. エンゲージメント/議決権行使

 上記6つの手法が、投資先選択に関するものであったのに対し、エンゲージメント/議決権行使は投資先との関わり方に関するものと言えます。エンゲージメントとは、投資先企業や投資を検討している企業に対し、株主(もしくは将来株主)の立場から企業に対して特定のアクションやポリシーを採るよう働きかけることを言います。議決権行使は、エンゲージメントよりさらに強力で、株主総会の場で株主の権利である議決権を行使し、企業の意思決定に対する力を行使することを指します。議決権行使では、ときには投資先企業の経営陣の意思と反する立場をとることもあり、プロキシー・ファイト(委任状争奪戦)までに発展することもあります。以前は、アクティビストと呼ばれることもあり嫌煙されていたエンゲージメントや議決権行使は、いまや株主の責任として積極的に行使することが求められるようになっています。日本版スチュワードシップ・コードの中でも、エンゲージメントや議決権行使は、株主の権利ではなく、「株主の責任」として位置づけられています。エンゲージメントや議決権行使の手法は、単独で採用されることもありますが、上記6つの手法と組み合わせて行われることも非常に多くあります。

参考サイト

【金融】世界と日本のSRI・ESG投資最前線
【金融】SRI/ESG投資インデックス一覧 〜MSCI, DJSI, FTSE4Good, モーニングスターの違い〜
【金融】ESG投資・SRIを推進するグローバル機関
【金融】ヘッジファンドとESG投資は両立可能?〜国連責任投資原則(UNPRI)での議論〜

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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