Sustainable Japan QUICK ESG研究所

クリーンパワープラン(Clean Power Plan) 2017/05/08 辞書

 クリーンパワープランとは、2015年8月に米国オバマ政権時に環境保護庁(EPA)が発表した電力事業者向けの二酸化炭素排出削減に関する政策です。この政策でEPAは、各州で発電事業所の二酸化炭素排出量を2030年までに2005年より32%削減させることを目標に掲げました。

背景

 この政策の背景には、米国における発電所の二酸化炭素排出量が、国全体の排出量の約3分の1を占めていたことがあります。オバマ政権は、パリ協定に向けたINDC(各国が自主的に決定する約束草案)として、2025年までに2005年比で26%から28%削減を掲げており、この実現に向け電力事業者の排出量に着眼し、これに対する規制強化を打ち出しました。

 クリーンパワープランは、2015年8月3日に最終版が発表され、2015年10月23日に官報に掲載され、法的効力が生じました。

クリーンパワープランの内容

 クリーンパワープランによる規制強化は、EPAに対して大気汚染防止のために目標を定めることを授権した大気浄化法(Clean Air Act)第111条(d)を法的根拠としています。クリーンパワープランは、電力事業者の二酸化炭素排出量に向け、連邦政府としての環境保護庁(EPA)は具体的な達成計画を策定せず、州政府に対して対策を講じることを義務化している点に大きな特徴があります。この政策のもとで、各州政府は、EPAの試算を参考にしながら、2016年から2030年までの二酸化炭素排出量削減計画を策定し、EPAに提出することが求められました。EPAの想定通りに州政府が削減計画を実施すれば、全米の発電所からの二酸化炭素排出量は2030年までに2005年比で32%削減され、削減量は年間8億7,000万tとなるとしました。クリーンパワープランは同時に、発電所からの二酸化硫黄排出量を90%、窒素酸化物(NOx)排出量を72%削減することも目指すと発表しました。

 このクリーンパワープランで、実質的な対象となったのは、二酸化炭素排出量、二酸化硫黄排出量、窒素酸化物排出量のいずれもが多い石炭火力発電です。石炭火力発電は全米の発電の約40%を占めており、クリーンパワープランは、石炭火力発電を大幅に削減させることになると大きな注目を集めました。EPAも、クリーンパワープラン実現に向けた行動の例として、石炭火力発電の発電効率向上や、石炭火力発電所を再生可能エネルギー発電所やガス火力発電所に転換を掲げました。

 クリーンパワープランの期待効果としては、経済創出効果が、気候変動に関して200億米ドル、健康に関して140億から340億米ドルと試算されました。また、公衆衛生面でも、未熟児死亡が3,600人減少、心臓発作患者が1,700人減少、喘息疾患者が90,000人減少することが見込まれました。

 各州が策定する計画をEPAに提出する期限は、中間計画に関しては2016年9月6日、最終計画については2018年9月6日と設定されました。最終計画には、2030年までの実施計画を定期的かつ確実に目標達成できることを説明できることが必要とされました。また、目標達成に効率的な方法として排出量取引も挙げられました。

米最高裁判所での違憲判決

 クリーンパワープランは、新たに立法する形で実施するのではなく、行政府だけでの権限で実行するため既存の法律を援用する形で制定されたため、同政策に反対するエネルギー関連企業や州政府からは、連邦政府の越権行為だとして提訴しました。裁判は、クリーンパワープランの無効を求めるものと、無効判決が確定するまでの一時的な施行停止を求めるものがそれぞれ進み、2016年2月に米連邦最高裁判所は原告の訴えを認め、高裁に相当する連邦巡回区控訴裁判所で無効判決が確定するまで、施行を一時的に停止すること判決を、連邦最高裁判事5対4の僅差で下しました。これにより、2016年9月6日に設定されていた中間計画の提出期限が実質的に延期されることとなりました。

 この判決は、さらに米国での議論を二分していきます。米国の大手企業ら365社は2016年7月31日、クリーンパワープランへの支持を表明し、連邦政府を提訴した29の各州に迅速な計画作成を求める要望書を提出しました。主導したのはサステイナビリティーに関するアドボカシーNGOのセリーズ。アディダスやユニリーバなどの大手企業が署名を行いました。また、オバマ政権も、2007年4月に連邦最高裁判所が下した「マサチューセッツ州対EPA」裁判で、二酸化炭素排出量は大気浄化法で規制することができると判決が出ていることを根拠に、クリーンパワープラン施行を貫く姿勢を示し、同年8月3日、最終計画を発表。クリーンパワープランの強行実施と中間計画提出の厳守を命じました。当然その後も反対州や企業は反発をしました。

トランプ政権でのクリーンパワープラン廃止

 トランプ大統領は2017年3月28日、EPAに対し、「クリーンパワープラン」の見直しを命ずる大統領令に署名しました。大統領は、理由について、雇用創出、エネルギー安全保障の強化、不要な環境規制による経済的負荷などを挙げました。これにより、米連邦最高裁判所判決後も実施を強行されていたクリーンパワープランは、廃止されることが実質的に決まりました。

参考文献

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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