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【北米コラム】シェアリング・エコノミー 2014/09/29 ESGコラム

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 「シェアリング・エコノミー」という言葉が使われ始めたのは2005年あたりからであり、直訳をすれば共有型経済ということになる。ピア・ツー・ピア(略してP2P)型で、個人の所有するモノ、サービスや才能を他人と共有することにより対価を得る。

 モノの共有では、もはや要らなくなった物を他人に売るeBayが先駆者であったかもしれない。インターネットとソーシャル・メディアの普及により、情報交換が迅速かつ簡便にできるようになったことが「シェアリング・エコノミー」に拍車をかけてきた。

 シリコン・バレーといわれるサンフランシスコ-サンノゼ近辺の企業が、「シェアリング・エコノミー」のビジネス・モデルを具現化している。モノのシェアは若者だけかと考えがちだが、実はそうでもない。タクシーやハイヤーが乗客のいない時に廉価で送迎サービスを提供するウーバー・テクノロジーズ社を、私が初めて聞いたのは、80歳代の友人からであった。歳をとると、タクシーをつかまえ、現金で対価を支払い,その上チップの多寡でひと悶着するストレスは相当のものらしい。昔のように思うように体が動かないので、なお更弱い立場であることを思い知るという。ところが、「ウーバーのサービスは、クレジットカードを事前にコンピュータで登録し、運転手の必要な時には簡単にリクエストができ、チップも既に織り込み済みなので、気楽なの。」と、その友人は教えてくれた。自家用車をタクシー代わりに活用できるサービスを提供しているリフト社は、目印にショッキング・ピンクの口ひげをサービス車のフロント・バンパーにつけるよう義務つけているが、ピンクの口ひげはサンフランシスコ市内で良く見かける。子供が巣立った後の空き部屋、出張中のアパートなどを貸し出すエアビーアンドビー社もあっという間に190カ国以上の物件を扱うようになった。「知らない人が家に寝泊りして怖くないの?」「変な人を車に乗せたりしたら危ないんじゃない?」という人のために、客のプロフィールをフェースブックで確認し、支払いもクレジットカードで確保し、過去の利用動向をサービス提供側で共有する仕組みになっている。もちろん、客も利用した後の感想をフィードバックする制度が整っている。客もサービス提供もどちらも、お行儀良くしないと風評に悪影響を及ぼすようになっている。最後の砦とも言える金銭関係にも「シェアリング・エコノミー」が出てきている。個人が見知らぬ個人にお金を貸すプラットフォームを提供するレンディング・クラブ社は、株式公開目前で、既に50億ドル以上のローンを仲介してきているという。

 従来は遊休資源であったものを有効活用できる素晴らしさがある反面、ホテル業界やタクシー業界などにとっては脅威となる存在が登場している。まさに、ディスラプティブである。サンフランシスコ市内では、前述のリフト社や、時間単位で車のレンタルのできるジップカー社を狙ってタクシーの運転手が生卵をぶつけて嫌がらせをする事件が相次いでいる。そのため、リフト社の目印のピンクの口ひげを車につけたがらない人が出てきているという。

 「シェアリング・エコノミー」が西海岸発で広まっている理由として、オンライン情報を駆使して、見知らぬ人でも信用できるようになってきたという説を良く耳にする。ところが、精神化学協会誌の記事によれば、「大抵の人は信用できる」と考えているアメリカ人は1972年から74年の46%から、2010年から12年には33%に減っているという。収入格差が大きければ大きいほど、また、貧困レベルが高いほど、人への不信感は高いという。 ・・ということは、都市としては比較的小さく(人口80万人)、全米に比べて富のレベルも高いサンフランシスコならではの現象なのだろうか?レンディング・クラブ社の直近ローン情報を見る限りでは、そうではない。サンフランシスコ在住のローンの借り手が$820万に対して、全体の残高は$18億ドルなので全体の0.4%にしか満たない。 ・・と、なれば人を信用するというよりは、政府や企業、金融機関などの媒体に対する不信感の高まりが、シェアリング・エコノミーへの需要を後押ししているのではないかと、個人的には感じるところである。

(QUICK ESG研究所) 執筆:Mari Kawawa 編集:松川

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