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【政府・レギュレーションの動向】水循環基本法 第2回 2015/08/10 ESGコラム

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 2014年7月1日に施行された「水循環基本法」(以下、「法」という。)に基づき、内閣総理大臣を本部長として設置された水循環政策本部は、2014年7月18日に開催された第1回の会合で、水循環を巡る現状と課題について以下の通り、提示した。気候変動リスク、ダム・浄水施設・上下水道等のインフラ施設の老朽化、海域を含めた流域全体の生態系の保全再生および森林を含めた水源地の保全等、多様な課題について、「水循環基本計画」に沿って今後、具体的な対応が、関係省庁の枠組みを超えて積極的に推進されることを期待したい。

水循環をめぐる現状と課題

「水は生命の源であり、絶えず地球を循環し、大気、土壌等の他の環境の自然構成要素と相互に作用しながら、人を含む多様な生態系に多大な恩恵を与え続けてきた。しかしながら、近年、都市部への人口の集中、産業構造の変化、地球温暖化に伴う気候変動等の様々な要因が水循環に変化を生じさせたことにより、以下のような課題が顕著となっている。
Ⅰ.健全な水循環系の構築
(1) 水災害・渇水の頻発/気候変動リスクの懸念
≪現状≫
○ 地球温暖化に伴って海面水位の上昇、大雨頻度の増加等による水害、土砂災害、高潮災害等がさらに頻発、激甚化することが指摘されている。
○ また、近年渇水が頻発しているほか、将来的には無降水日の増加なども懸念され、さらなる危機的な渇水により都市機能の麻痺や社会経済活動に大きな影響を与える可能性がある。
⇒ 【課題:気候変動リスクへの適応】
(2)進行する水インフラの老朽化
≪現状≫
○ 水循環系を構築する水インフラは、戦後の高度経済成長とともに逐次整備されてきたが、老朽化した水インフラが今後急速に増加し、これに起因する災害時・事故発生時のリスクが高まっている。
⇒ 【課題:計画的な水インフラの老朽化への対応】
(3)水環境・生態系の保全・再生
≪現状≫
○ 公共用水域の水質に係る環境基準の達成率について、河川においては約9割(BOD<生物化学的酸素要求量>:平成24年度)であるのに対し、湖沼においては約6割(COD<化学的酸素要求量>:平成24 年度)と依然として低い水準である。
また、水質汚濁防止法等に基づく国及び都道府県の監視・規制や、下水道の整備などの水質改善に向けた取組、多様な生物の生息・生育環境に配慮した河川・水域の整備や保全などの取組が推進されている。
○ 生物多様性国家戦略2012-2020(平成24年9月閣議決定)において、水循環の基盤となる森、里、川、海を連続とした空間として捉え、流域全体の生態系を保全・再生していくことが求められている。
⇒ 【課題:水環境・生態系の保全・再生の取組】
(4)雨水・再生水の利用
≪現状≫
○ 雨水・再生水の重要性が再認識され、導入事例が増加している。全国で雨水・再生水を利用している公共施設や事務所ビル等の数は3,654 施設(平成22年度末時点)あり、トイレ(全体施設数の46%)や散水(全体施設数の22%)等に利用されている。しかしながら、利用量は年間およそ2億6千万m3であり、生活用水全体の1.7%程度(平成22年末時点)である。
⇒ 【課題:雨水・再生水の利用促進】
(5)地下水の保全と利用
≪現状≫
○ 地下水の過剰な採取による地盤沈下は地表水への転換などの対策や規制により、近年沈静化の方向であるものの、平成 6年などの少雨の年に地盤沈下が進行している地域がある。
○ 一方、地下水位が回復しつつある地域では、地下構造物の浮き上がりなどに影響を与える事象もいくつか発生している。
○ また、地下水質についても、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素等一部の項目で環境基準超過率が高くなっている。
⇒ 【課題:地下水の保全と利用のあり方】
(6) 水源地の保全
≪現状≫
○ 水源地の大宗を占める森林については、国土利用計画法や森林法に基づく所有者の届出制度等により所有者の異動を把握するよう措置しているとともに、森林法に基づく保安林制度や林地開発許可制度により、伐採や開発の規制等を措置している。
○ また、水源涵養機能等の維持及び向上を図るため、水源地の森林等の整備・保全に取り組んでいる。
○ さらに都道府県独自の取組として、水源地における土地の買収等について事前届出の義務を課し、土地所有者等に水資源の保全の重要性を説明するという趣旨の条例の策定が行われている。(平成 26年 4月現在15道県が条例を制定)
⇒ 【課題:水源地の保全のあり方】
Ⅱ. 教育・普及啓発
≪現状≫
○ 内閣府世論調査(平成20 年)によれば、「使っている水道の水の水源」について、「知っている」とする人の割合は67.8%となっており、前回の調査(平成13 年)の73.7%と比較すると水源に関する認知度は低下傾向にある。また、大都市や若年層ほど水源に対する認知度が低くなっている。
⇒ 【課題:教育・普及啓発を通じた風土・文化の醸成】
Ⅲ.世界の水問題解決に向けた国際貢献
≪現状≫
○ 我が国は、国連における2015年より先の国際開発目標の議論のリード、国連水と衛生に関する諮問委員会(UNSGAB)の支援及び世界水フォーラムへの参画、さらには、統合的水資源管理(IWRM)の普及のためのアジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)等の設立、水分野における国際標準化への参画、ODA等 による開発途上国への技術協力や施設整備の支援、我が国民間企業の有する技術を活用した水ビジネス展開への支援等を通じて、世界の水問題の解決に貢献してきている。
⇒ 【課題:国際社会でのプレゼンス強化】

<参考>今後、決定される予定の「水循環基本計画」の骨子は、次の通りである。

(1)総 論
水循環基本計画の性格、計画期間等について記述する。

(2)第1部 水循環に関する施策についての基本的な方針
① 健全な水循環の維持又は回復のための取組の積極的な推進 (第3条1項関係)
② 水の適正な利用及び水の恵沢の享受の確保 (第3条2項関係)
③ 水の利用における健全な水循環の維持 (第3条3項関係)
④ 流域における総合的かつ一体的な管理 (第3条4項関係)
⑤ 国際的協調の下での水循環に関する取組の推進 (第3条5項関係)

(3)第2部 水循環に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
① 貯留・涵養機能の維持及び向上 (第14条関係)
② 水の適正かつ有効な利用の促進等 (第15条関係)
③ 流域連携の推進等 (第16条関係)
④ 健全な水循環に関する教育の推進等 (第17条関係)
⑤ 民間団体等の自発的な活動を促進するための措置 (第18条関係)
⑥ 水循環施策の策定に必要な調査の実施 (第19条関係)
⑦ 科学技術の振興 (第20条関係)
⑧ 国際的な連携の確保及び国際協力の推進 (第21条関係)

(4)第3部 水循環に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための必要な事項
(第4~10条関係)

出所:水循環政策本部会合(第1回:2014年10月14日)配布資料より、QUICK ESG研究所編集

【関連資料】水循環政策本部会合(第1回:2014年10月14日)配布資料

執筆:QUICK ESG研究所 菅原 晴樹

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