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【政府・レギュレーションの動向】水循環基本法 第3回(終) 2015/08/11 ESGコラム

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 「水循環基本法」(以下、「法」という。)に基づき、内閣総理大臣を本部長として設置された水循環政策本部会合(第2回)が2015年7月10日開催、「水循環基本計画」(案)が提出され、その後の閣議で「水循環基本計画」(以下、「本計画」という。)が決定された。2014年7月1日「水循環基本法」が施行され、2014年10月14日「本計画」の骨子が示された後、2回にわたり有識者の意見聴取を行い、さらにパブリックコメントを求めた結果、今回の「本計画」策定に至った。
 水は生命の源であり、絶えず地球上を循環し、大気、土壌などの他の環境の自然的構成要素と相互に作用しながら、人を含む多様な生態系に多大な恩恵を与え続けてきた。また、水は循環する過程において、人の生活に潤いを与え、産業や文化の発展に重要な役割を果たしてきた。
 我が国は、年間降水量約1,700mmと世界平均の約2倍である。しかしながら、降水量は地域的、季節的に偏っており、また、地形が急峻であることから、降った雨は一気に河川に流れることになり、洪水が発生しやすいといった特性を有する。降った雨は地表水または地下水となって、生活用水、工業用水、農業用水および発電用水等として活用されるとともに、再び河川や地下水に還元されたものについても利用されている。
 我が国は、すでに人口減少期に入り、過疎化・高齢化の進展や、産業構造の変化、地球温暖化に伴う気候変動などの新たな課題にも対応していかなければならない。例えば、過疎化地域を中心に、健全な水循環の維持または回復に資する森林、農地等の水源涵養機能などが損なわれるおそれがあり、他方、都市化の進展等による雨水の地下浸透量の減少は、都市における湧水の枯渇、平常時の河川流量の減少とそれに伴う水質の悪化、洪水時の流量増加をもたらすおそれがある。また、近年、全国各地において渇水が発生する一方、頻発する大雨洪水などといった地球温暖化に伴う気候変動の影響等も顕在化している。
 世界では、渇水、洪水、水環境の悪化に加え、これらに伴う食料不足、貧困の悪循環および病気の発生等が問題となっている地域が存在し、さらに人口増加や経済成長などの要因がそれらの問題を深刻化させているなど、世界の水問題は引き続き取り組むべき重要な課題である。さらに今後、地球温暖化に伴う気候変動等の影響により、世界各地で渇水や洪水がより一層深刻化する可能性がある。
 これらの状況を踏まえて、健全な水循環の維持または回復のための取組を総合的かつ一体的に推進していかなければならない。
 「法」において、「「水循環」とは、水が、蒸発、降下、流下または浸透により、海域等に至る過程で、地表水または地下水として河川の流域を中心に循環すること」としている。また、「「健全な水循環」とは、人の活動および環境保全に果たす水の機能が適切に保たれた状態での水循環」としている。このことは、「健全な水循環」 の維持または回復に当たっては、人の生活や産業活動に果たす水の役割と自然環境に果たす水の役割が適切なバランスで維持されなければならないことを意味している。また、将来にわたり健全な水循環の維持または回復がなされるためには、地球温暖化に伴う気候変動等を踏まえた対応や、少子高齢化、人口減少、過疎化、産業構造に関わる今後の長期的な変化等を踏まえた対応も必要になる。
 我が国は、かつての社会問題化した水質汚濁や地盤沈下を克服してきた技術・経験を有しており、その優れた技術で、開発途上国の発展に寄与することが重要である。
 水が人類共通の財産であることを再認識し、水が健全に循環し、そのもたらす恩恵を、河川の源流から河口、海域に至る全ての地域の国民が、将来にわたり享受できるよう、健全な水循環を維持し、または回復するための施策について、多くの関係者の参画の下、推進していくことが不可欠である。
 水循環に関わる施策については、これまで幅広い分野におよぶ多種多様な個別の施策が講じられてきているが、今後は健全な水循環の維持または回復という目標を共有し、これら個別の施策を相互に連携・調整しながら進めていくことが重要である。また、政府全体で総合的に調整しながら進めていくことが必要となる施策も多い。こうしたことから、水循環に関する施策を総合的かつ一体的に推進すること等を目的に、2014年7月1日、「法」が施行されたものである。
  「本計画」は、法第1条に定められる目的を達成するため、法第13条に基づいて、我が国の水循環に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定するものであり、我が国の水循環に関する施策の基本となる計画として位置付けられる。「本計画」において、特に注目されるのは、人の活動により水循環への影響があると考えられる地域全体(以下、単に「流域」という。)を対象として、流域ごとに「流域水循環協議会」を設置し、流域に関係する行政などの公的機関、事業者、団体および住民等がそれぞれ連携して「流域水循環計画」を策定し、それに沿って、その流域の森林、河川、農地等を適切に保全および管理し、水資源を確保するため施設整備ならびに活動を実施するよう努めるものである。
 従来、複数の省庁、地方自治体にまたがり管理等が困難であった河川を、流域単位で行政の枠組みを超えて総合的かつ一体的に取り組むという試みであり、調整、実施には時間を要するとは思われるが、今後将来にわたって安全で良質な水が確保されるためには手遅れにならない迅速な対応を期待したい。
 「本計画」は、今後10年程度を念頭に置きつつ、さらに長期的な視点を踏まえながら、2015年度からの5年間を対象期間として策定する。 なお、本計画は、おおむね5年ごとに見直しを行い、必要な変更を加えるものとする。

出所:水循環基本計画(平成27年7月10日閣議決定)より、QUICK ESG研究所編集

【関連資料】水循環基本計画(平成27年7月10日閣議決定)
【関連コラム】
【政府・レギュレーションの動向】水循環基本法 第1回
【政府・レギュレーションの動向】水循環基本法 第2回

執筆:QUICK ESG研究所 菅原 晴樹

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