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【機関投資家】被用者年金制度の一元化について 2015/09/29 ESGコラム

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(1) 趣旨

 多様な生き方や働き方に公平な社会保障制度を目指す「社会保障・税一体改革大綱について(2012年2月17日 閣議決定)」を踏まえた被用者年金一元化法成立により、2015年10月1日から被用者年金制度が一元化されることになった。今後将来の制度の成熟化や少子・高齢化の一層の進展等に備え、年金財政の範囲を拡大して制度の安定性を高めるとともに、民間被用者、公務員を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるという公平性を確保することにより、公的年金全体に対する国民の信頼を高めるため、国家公務員共済年金、地方公務員共済年金および私学共済年金に加入している公務員および私立学校教職員などの被用者は、厚生年金に加入することになる。また、共済年金の3階部分(職域部分)が廃止されるとともに、新たに「年金払い退職給付」が創設される。
① 3共済制度の加入者は厚生年金の被保険者になる。
② 3共済制度の保険料(掛金+負担金)は厚生年金保険料と統一される。
③ 3共済制度の3階部分(職域部分)が廃止されるとともに、新たに「年金払い退職給付」が創設される。

(2)法整備

2012年8月10日 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律が成立。共済年金に含まれる「職域部分」が廃止。別途法律が成立し、職域部分の廃止と同時に、新たな公務員制度としての新3階年金「年金払い退職給付」が設けられることになった。
2012年11月16日 国家公務員の新3階年金を規定する「国家公務員退職手当等改正法」が成立。
2012年11月16日 地方公務員の新3階年金を規定する「地方公務員等共済組合法等改正法」が成立。
2012年11月16日 私立学校教職員の新3階年金を規定する「私立学校教職員共済法等改正法」が成立。

(3)新年金制度「年金払い退職給付」の概要

  • 2012年3月7日に公表された「人事院報告書」によると、民間の退職給付額の平均は25,477千円、国家公務員の平均は29,503千円となり、国家公務員のほうが4,026千円高いことが判明した。
  • 「共済年金職域部分と退職給付に関する有識者会議」を設置。
  • 29,503千円のうち、退職手当法に基づく給付が27,071千円で、残りの2,433千円は共済年金の職域部分の事業主負担分に相当する給付額の一時金換算額であるが、これを4,026千円減らし、2,433千円相当の年金払い退職給付を創設する。
  • 給付額はキャッシュ・バランス方式:年金支給開始時における各組合員のこれまでの組合員期間各月の標準報酬月額および標準期末手当等の額に一定率を乗じた金額とこれらの金額に一定のルールでの利子相当額を加えた元利合計額をその時点の年金現価率で割り算して得られる金額

給付:退職年金(終身及び有期)・公務障害年金・公務遺族年金、 費用:労使折半(1.5%上限)

(4)積立金基本方針

2013年7月30日 「積立金基本指針に関する検討会」が設置される。主務大臣たる厚生労働大臣が4つの事項が定められた基本指針を作成することとし、三大臣(財務大臣、総務大臣、文部科学大臣)に協議して定め公表する。
2014年3月31日 「積立金基本指針に関する検討会」が5回開催され、「積立金基本指針に関する検討会報告書」が公表

  • 一元化後の積立金の運用については、主務大臣が改正後の厚生年金保険法第
    79条の4第1項に規定する「積立金の管理及び運用が長期的な観点から安全かつ効率的に行われるようにするための基本的な指針(積立金基本指針)」を定めて行うこととしている。
  • 積立金基本指針には、同条第2項第1号から第4号までにおいて
  • 積立金の管理及び運用に関する基本的な方針
  • 積立金の資産の構成の目標に関する基本的な事項
  • 積立金の管理及び運用に関し管理運用主体が遵守すべき基本的な事項
  • その他積立金の管理及び運用に関する重要事項

を定めることとしている。

具体的には

  • 基本ポートフォリオを定めるにあたり、モデルポートフォリオを定めること。
  • 日本版スチュワードシップ・コードを踏まえた方針の策定・公表の検討
  • 株式運用において、財務的な要素に加え、収益確保のため、非財務的要素である「ESG」を考慮することについて、各管理運用主体において個別に検討すること。

 2014年7月3日 総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省告示第1号として、「積立金の管理及び運用が長期的な観点から安全かつ効率的に行われるようにするための基本的な指針(積立金基本指針)」が公表された。内容的には「積立金基本指針に関する検討会」が2014年3月31日に公表した「積立金基本指針に関する検討会報告書」と同一のものである。

(5)積立金の資産の構成の目標(モデルポートフォリオ)

 2015年3月20日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)および3共済は、モデルポートフォリオを以下のように定め、一元化法の施行日(2015年10月1日)から適用することとした。資産構成比率は、2014年10月31日にGPIFが公表した基本ポートフォリオと同一となった。「中心値範囲」もGPIFの基本ポートフォリオにおける「乖離許容幅」と同一となったが、3共済はそれぞれの状況に応じて柔軟に設定できることとなった。

資産 国内債券 国内株式 外国債券 外国株式
モデルポートフォリオ 35% 25% 15% 25%
中心地範囲 上記±10% 上記±9% 上記±4% 上記±8%

出所: 積立金の資産の構成の目標(モデルポートフォリオ)

(6)積立金の管理・運用

 現在の共済年金は、1・2階部分と3階部分が一体の年金財政になっているため、積立金も1・2階部分と3階部分の区別はされていない。被用者年金一元化に際して、1・2階部分の給付のみを行っている厚生年金の積立金の水準に見合った額を、一元化後の厚生年金の積立金(共通財源)として仕分ける。積立金は、厚生年金とのバランスを確保するため、保険料で賄われる1・2階部分の年間支出に対して何年分を保有しているかという水準(積立比率)が揃うように、1・2階部分の積立金として仕分けられる。なお、仕分け後、各共済年金に残る積立金については、廃止される職域部分の給付に充当される。法律上は、2015年3月31日末時点の積立金と2015年度の支出に基づき仕分けされるとされている。実際には、積立金の管理・運用については、保険料の徴収から年金給付に至るまで年金事務の一部であると整理し、引き続き各共済組合等で活用していくことにしている。

(7)今後の運用資産構成の動向

 GPIFは、すでに2014年10月31日付で第2期中期計画を変更し、それ以降に見直した基本ポートフォリオに沿って、運用資産の構成割合の変更を進めてきた。2015年8月27日に公表された2015年度第1四半期の運用状況をみると、国内債券37.95%(39.39%)、国内株式23.39%(22.00%)、外国債券13.08%(12.63%)、外国株式22.32%(20.89%)、短期資産3.27%(5.08%)とカッコ内に示した2014年度末の資産構成からさらに基本ポートフォリオに近づいてきた。
国家公務員共済組合連合会は、2015年2月25日付でGPIFと同じ基本ポートフォリオに変更しているが、地方公務員共済組合連合会および日本私立学校振興・共済事業団は、現段階でポートフォリオを大きくは見直していない。
また、3共済は、現時点で2015年度第1四半期の状況を公表していないため、2015年3月31日決算時点の状況からどの程度運用資産構成が変動したかはわからないが、今後、一元化に向けて、現在の債券ウエイトを下げ、内外ともに株式のウエイトを高めていくことになる。さらに、地方公務員共済組合連合会の傘下にある共済組合の資産合計は20兆円超を有しているが、今後徐々に地方公務員共済組合連合会と同様の資産構成の変更を行う見込みである。

QUICK ESG研究所 菅原 晴樹

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