Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【政府・レギュレーション動向】「投資信託委託会社における議決権行使アンケート調査結果」について 2015/11/16 ESGコラム

shareholder

 2015年10月6日、一般社団法人投資信託協会(以下「本会」という。)は、2015年5月および6月に開催された株主総会における国内株式の議決権行使状況についてアンケート調査を行い、2015年分として公表した。

 従来から、投資信託委託会社は、投資信託の受益者の利益を図るために、「投資信託及び投資法人に関する法律」第10条および本会規則「正会員の業務運営等に関する規則」第2条の規定に基づき、議決権行使を行っている。また、議決権の指図行使に関しては、本会が2003年3月に制定した「議決権の指図行使に係る規定を作成するに当たっての留意事項」によって、各社ごとに議決権行使に関するガイドラインを作成し、これに沿って行使するとともに、各社ガイドライン・行使結果を公表している。

 2013年6月「日本再興戦略」、2014年2月「日本版スチュワードシップ・コード」、2014年8月「伊藤レポート」、2015年4月「会社法改正」および2015年6月「東京証券取引所 有価証券上場規則改正:コーポレートガバナンス・コード」など、資産運用業界を取り巻く環境が大きく変化する中、さらに、2015年9月「GPIF 国連責任投資原則署名」、2015年10月「被用者年金一元化」および2015年9月日本労働組合総連合会「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」の改訂により、GPIFおよび3共済等の公的年金およびNISAおよびジュニアNISAを受け皿とする個人資金など国内株式への資金シフトが想定される。年金基金および個人の投資信託委託会社を見る目は一層厳しくなる中、投資信託委託会社は、エンゲージメントおよび議決権行使について、従来以上の対応を図る必要があり、その結果について詳細な公開が求められることになるだろう。

投資信託委託会社における議決権行使アンケート調査結果の概要は、次の通り。
調査対象は、本会正会員153社のうち、証券投資信託運用会社91社(2015年6月30日時点)の中で、国内株式を運用対象としている65社である。

(1)議決権行使状況の概要

会社提案議案235,958件における反対等行使比率(反対または棄権した割合)は、2014年分と変わらず、13%である。
反対等行使比率が10%を超えた議案は以下の通り。
・退職慰労金支給 :43%
・その他の会社提案(買収防衛策、第三者割当増資、自己株式取得等):30%
・監査役選任:22%
・新株予約権発行:17%
・取締役選任:13%

株主提案6,221件に対する賛成行使比率は、5%(昨年7%)で、賛成行使比率が10%を超えた議案は以下の通り。
・役員報酬額の開示等:52%
・増配:25%

(2)投資信託委託会社の過去1年間における社内規定の改定の有無

65社中36社(55%)が改訂を行っており、その理由は、会社法改正、コーポレートガバナンス・コードへの対応のためおよびスチュワードシップ・コードへの対応のためであった。

(3)議案を判断するための体制整備(複数回答)

  • 社内の議決権行使基準に照らして担当者が判断:82%
  • 委員会を設置して判断:49%
  • 助言機関の助言を基に担当者が判断:26%
  • その他:15%

(4)株式発行会社への説明

機関投資家として、発行会社のコーポレートガバナンスに対する考え方やそれを踏まえた議決権行使基準の内容等について、この1年間(2014年6月~2015年5月)に発行会社へ説明等を行ったかについては、41社(63%)(昨年:52%, +11%)が行ったと回答。

(5)発行会社からの議案の事前説明

36社(55%)が説明を受けたと回答。
事前説明の主な内容は、社外取締役、買収防衛策、株主提案、役員報酬、剰余金処分およびストックオプションに係る事項等であった。

(6)発行会社からのコーポレートガバナンス・コードへの対応等についての説明

39社(60%)が直接説明を受けたと回答。
説明の主な内容は、社外取締役・社外監査役の選任、コーポレートガバナンス・コードへの取り組み姿勢および進捗状況、コーポレートガバナンスの基本方針、政策保有株式およびROE目標に係る事項であった。

(7)日本版スチュワードシップ・コードへの対応

受け入れ表明済みが62社(95%)(昨年:79%, +16%)、予定および検討中が0社(0%)、受け入れ表明しないが3社(5%)であった。
受け入れ表明済みの会社が行った有意義なエンゲージメントの主な内容は、株主還元策、ROE等を踏まえた資本効率の改善、今後の経営戦略、ガバナンスおよびIRの在り方

(8)議決権行使に関係する諸機関等への意見・要望、全般についての意見

  • 議決権電子行使プラットフォームへの積極的参加
  • 株主総会開催通知の早期発送
  • 株主総会の開催日の分散化

【参考資料】
議決権行使状況についてのアンケート調査結果について
投資信託及び投資法人に関する法律 第十条
「(議決権等の指図行使)
第十条  投資信託財産として有する有価証券に係る議決権並びに会社法第百六十六条第一項 、第二百二条第二項及び第四百六十九条第一項の規定に基づく株主の権利、同法第八百二十八条第一項 の規定に基づき同項第二号 及び第三号 に掲げる行為の無効を主張する権利その他これらに準ずる株主の権利で内閣府令で定めるもの(投資主、協同組織金融機関の優先出資に関する法律 (平成五年法律第四十四号。次項において「優先出資法」という。)に基づく優先出資者その他政令で定める者の権利でこれらに類する権利として政令で定めるものを含む。)の行使については、投資信託委託会社がその指図を行うものとする。
2  投資信託財産として有する株式(投資口、優先出資法 に規定する優先出資その他政令で定める権利を含む。)に係る議決権の行使については、会社法第三百十条第五項 (第九十四条第一項、優先出資法第四十条第二項 その他政令で定める規定において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。」
正会員の業務運営等に関する規則 第2条「(議決権の指図行使)
第2条 投資信託委託会社等会員(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年法律第198号)第2条第11項に定める投資信託委託会社(以下「投資信託委託会社会員」という。)及び第19項に定める資産運用会社である正会員をいう。以下同じ。)は、投資信託財産として有する株式に係る議決権の行使について、次の各号に定めるところにより、その指図を行うものとする。(1)投資信託委託会社等会員がその運用の指図を行う投資信託財産として有する株式に係る議決権の行使の指図については、書面をもって行うものとする。ただし、投資信託委託会社等会員が、あらかじめ運営機関(電磁的方法による議決権行使システムを運営している機関をいう。)及び受託会社と利用規約等を取り交わし、電磁的方法により議決権の行使を行う場合には、この限りではない。(2)投資信託委託会社等会員は、受託者に対し、株主総会招集通知書に記載された各議案について、次の意思表示を明示するものとする。(イ)議案に対し賛成であること。(ロ)議案に対し反対であること。(ハ)投資信託委託業者を代理人として白紙委任すること。(ニ)棄権すること。」

QUICK ESG研究所 菅原 晴樹

Facebookコメント (0)

ページ上部へ戻る