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【政府・レギュレーションの動向】「CGシステムの在り方に関する研究会」報告書の公表について-その2 2015/07/28 ESGコラム

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 その2.2014年12月15日検討再開

 「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」(座長 神田秀樹 東京大学大学院法学政治学研究科教授、事務局 経済産業省経済産業政策局産業組織課、オブザーバー 法務省大臣官房および金融庁総務企画局企業開示課。以下「本研究会」という。)は、2014年6月30日に中間とりまとめ等を公表したが、コーポレートガバナンス・コードの策定に向けた動きや新たな実務上または法制上の問題等を踏まえ、2014年12月15日に第9回会合を開催し、検討を再開した。

 

1.これまでの活動

 本研究会は、2012年3月7日に社外役員を含む非業務執行役員に期待される役割について整理を行うとともに、広く企業システムの在るべき形について検討を開始した。そして、社外取締役の確保に向けた改正会社法が2014年6月20日に成立したことを受け、それまでの検討の総括として、2014年6月30日に「社外役員を含む非業務執行役員の役割・サポート体制等に関する中間取りまとめ」(※1)および「社外役員等に関するガイドライン」(※2)を公表した。

 

※1 社外役員等に期待される役割と企業のサポート体制に関し、実務上の参考となるよう我が国企業のベスト・プラクティスを集めたもの。

※2 中間とりまとめのサマリーとして、中間とりまとめを実務において広く活用できるようまとめたガイドライン。

2.新たな検討開始の経緯・背景

 2014年6月24日に公表された『「日本再興戦略」改訂2014-未来への挑戦-』においても、コーポレートガバナンスを強化して持続的な企業価値向上につなげることが重要であるとされた。

 2014年6月20日、社外取締役の導入を促進することを内容とする改正会社法が成立し、さらに金融庁と東京証券取引所を共同事務局とする「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」において、コーポレートガバナンス・コードの策定を行い、2015年3月5日「コーポレートガバナンス・コード原案~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」が公表され、2015年6月1日「コーポレートガバナンス・コード」を東京証券取引所の有価証券上場規程の別添として定めた。

 経済産業省では、このように我が国のコーポレートガバナンスを強化する取組が進む中、コーポレートガバナンス・コードの策定に向けた動きに加えて、新たな実務上または法制上の問題等を踏まえ、企業価値向上の観点から、違法行為や不祥事を防止するための「守り」のガバナンス体制だけでなく、適切なリスクテイクを後押しし、経営者が果敢な意思決定を行うことができるようにするための「攻め」のガバナンス体制を強化するべく、本研究会における検討を新たに開始するもの。

3.本研究会の今後の検討予定項目

 本研究会では「攻め」のガバナンス体制の強化に向けて、以下の事項等について検討を行う予定である。

 

取締役会の役割

 ・適切なリスクテイクを後押しし、プラスを伸ばす「攻め」の体制を確保する観点か  

  ら、取締役会の役割をどう考えるか。

適切な役員報酬の在り方

 ・報酬は、経営者等に対してインセンティブを付与する機能を有していることを踏まえ、経営者の果敢な意思決定や社外取締役の活用をさらに後押しする観点から、役員報酬をどのように設計するか。

保険等による適切な責任軽減

 ・経営者の果敢な意思決定をさらに後押しし、内外から社外取締役として適切な人材 

  を確保する観点から、役員の適切な責任軽減の仕組みや手続についてどう考えるか。

社外取締役の役割と責任の明確化

 ・コーポレートガバナンス・コードにより、Comply or Explainルールの下で、上場会社は独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとされる方向で検討されているところ、こうした社外取締役に期待される役割と責任についてどう考えるか。

社外取締役を構成員とする委員会の活用

 ・社外取締役を構成員とする任意の委員会の活用についてどう考えるか。

社外取締役の選任を踏まえた監査役の在り方

 ・社外取締役には「攻め」の経営を後押しする役割が期待されるところ、社外取締役が選任されたことを踏まえて、監査役の在り方についてどう考えるべきか。

出所: 経済産業省 コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会の中間とりまとめとガイドラインを公表します よりQUICK ESG研究所編集

 <参考> 本研究会の今後の検討予定項目と2014年6月30日に本研究会が公表した「ガイドライン」および「中間取りまとめ」の主要な関連部分等

1. 取締役会の役割

<社外役員等に関するガイドライン>

2.2 企業の情報発信(ガイドライン5ページ)

(略)取締役会に求める役割(たとえば、監督に特化したモニタリング型か、業務執行の意思決定を中心的役割としたオペレーション型か、両者のハイブリッド型か等)に応じ、非業務執行役員の役割やこれを巡る企業内システムも変わるのであり、企業は、これらを整合的に検討・発信することが重要であり、本ガイドラインおよび本研究会の中間取りまとめに記載された事項も、かかる観点を踏まえて参照されることが重要である。

3.3.1 (ガイドライン6ページ)企業は、取締役会において、重要な業務執行の決定および職務執行の監督に必要な事項に関し、活発な議論が可能になるように、取締役会の議題を設定することが望ましい。

<中間取りまとめ >

2.2. 取締役会(ボード)の役割について(中間とりまとめ9ページ)

(日本と外国との違い)

・社外役員を含む非業務執行役員の役割を議論する前提として、取締役会の権限や義務、機能は何かという点が重要であるとの指摘があった。特に、諸外国と比較しつつ議論するのであれば、海外の機関投資家は、日本の企業の取締役会を、その実態とは異なるイメージで捉えている可能性があることに留意することが重要との意見がなされた。

・具体的には、英米で見られるような監督に特化した取締役会(モニタリング型)なのか、業務執行に関する意思決定を中心的役割とした取締役会(オペレーション型)なのか、の区別がある。

・欧米では、前者のモニタリング型の取締役会が普通であり前提とされるが、我が国においては、企業によって両者の選択が可能である。

(機関設計選択の考え方について)

・上記の取締役会の役割に密接に関連する点として、機関設計の選択がある。機関設計については、我が国の現行法制上、委員会設置会社と監査役会設置会社を選択することができる。また、会社法改正案においては、新たな機関設計として、監査等委員会設置会社も選択することが可能である。

・委員会設置会社は通常モニタリング型と理解できる。他方、監査役会設置会社は、オペレーション型となるケースが多いと考えられるが、取締役会の議題・事実上の機関の建付け(任意の指名委員会や報酬委員会)により、モニタリング型の取締役会を実現することもできると考えられる(いわゆる「ハイブリッド型」)。

(オペレーション型とする場合の監督機能確保の在り方について)

・取締役会をオペレーション型とする場合、監督機能をどの機関が果たすか、とりわけ指名・報酬決定の在り方が論点となりうる。本研究会では、この点について、オペレーション型取締役会を有する企業からのヒアリングの中で、社外監査役を含め監査役が、適法性に限らずビジネスの中身についてまで監督機能を発揮している、取締役の報酬については半数以上を社外委員で構成する報酬委員会を設置し、その答申に基づいて取締役会において決定している、とのやりとりがあった。

 

2. 適切な役員報酬の在り方

<社外役員等に関するガイドライン>

4.3.1 (ガイドライン7ページ)企業は、業績を客観的な視点から評価し、それを報酬に適正に反映させるため、業務執行役員の報酬の決定過程の透明性の在り方について検討することが望ましい。

5.3.1 (ガイドライン9ページ)企業は、非業務執行役員の報酬水準を、その職務に投入する時間及び職務上果たすべき役割を反映したものとすることが望ましい。

 

3. 保険等による適正な責任軽減

<第2回研究会におけるヒアリング結果の概要>

・特に外国の方の場合、社外取締役の候補者選びは難しい。責任軽減については、保険を使いながら、実質的に海外と同じような形となるよう工夫している。

 

4. 社外取締役の役割と責任の明確化

<社外役員等に関するガイドライン>

5.1.1 (ガイドライン7ページ)非業務執行役員は、取締役会に上程される事項に限らず、自らが知り得た情報の中に、違法性を疑わせる事情があれば、監査役を含む他の非業務執行役員等と連携して、調査し、取締役会で意見を述べること等により、違法又は著しく不当な業務執行を防止すべきである。

5.1.2 社外取締役は、経営戦略の策定、投資・M&A の実行、企業の経営・構造改革などの業務執行の重要な事項について、社内外での知見・経験を生かし、業務執行の過程で不可避的に生じる各種利益相反事象を含むリスクに対処し、企業価値の持続的な向上のため外部の視点から忌憚のない意見を述べることが望ましい。

5.1.3 社外取締役は、役員の選任・選定過程、報酬の決定過程において、人事・報酬の決定が役員評価の重要な手段であることを考慮し、忌憚のない意見を述べることが望ましい。

 

5. 社外取締役を構成員とする委員会の活用

<社外役員等に関するガイドライン>

4.2.1(ガイドライン7ページ) 企業は、人事が評価の重要な手段であることを踏まえ、業務執行役員の選任・選定過程の透明性の在り方について検討することが望ましい。

4.3.1 企業は、業績を客観的な視点から評価し、それを報酬に適正に反映させるため、業務執行役員の報酬の決定過程の透明性の在り方について検討することが望ましい。

5.1.3 社外取締役は、役員の選任・選定過程、報酬の決定過程において、人事・報酬の決定が役員評価の重要な手段であることを考慮し、忌憚のない意見を述べることが望ましい。

 

<中間取りまとめ(25ページ)>

(情報・通信O社)

(外資系企業で執行経験のある社外取締役が、当該企業での社長評価や社長交代の経験を生かして、任意の指名・報酬委員会において、独立した立場から社長の業績評価、次期社長の人物評価を行っている例)

・外資系企業で代表者の経験のある社外取締役が、任意に設置された指名報酬委員会において、インタビューによる次期社長の人物評価、年度当初に定める定量的な指標に基づく社長の評価などを行っている。

 

6. 社外取締役の選任を踏まえた監査役の在り方

<社外役員等に関するガイドライン>

5.4 監査役等の役割(ガイドライン9ページ)

5.4.1 監査役等は、業務調査権限を有した非業務執行役員として、違法又は著しく不当な業務執行の有無を調査し、内部統制システムの整備運用状況その他業務執行役員の業務執行の状況を監査するとともに、会計監査人の独立性その他会計監査の実効性について監査すべきである。

5.4.2 監査役等は、取締役や会計監査人との意思疎通や、内部監査・内部統制部門との連携を図ることにより、自らの職務遂行に必要な情報を収集すべきである。社外監査役は、必要に応じて、自ら一次情報を取得することが考えられる。

5.4.3 監査役等は、企業不祥事が生じた有事においては、不正の原因を徹底的に追及するとともに、必要により当該事象と利害関係のない社外専門家等と協働し、調査委員会等を組織することが望ましい。

5.4.4 監査役は、取締役会その他の自らが出席する重要会議において、適法性の観点に限らず、妥当性の観点からも意見を持った場合には、自らの意見を述べることが考えられる。

6.4.1 (ガイドライン11ページ)企業は、非業務執行役員が経営に対する監督を実効的に行うために、業務執行役員や他の非業務執行役員との間で定期的に会合を開くなど、役員相互での情報共有、意見交換を充実させるための環境を整備することが望ましい。

出所:コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会(第9回)資料5 参考資料 よりQUICK ESG研究所編集

 

次回のコラムでは、2015年7月24日に公表された、「コーポレートガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」の報告書について紹介する。

 

【関連資料】

コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会(第9回)

経済産業省:コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会の中間とりまとめとガイドラインを公表します

経済産業省:コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会での検討を新たに開始します

    

執筆:QUICK ESG研究所 菅原 晴樹

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